第12話 ページ15
◇
「なんで…おいつくのっ……」
「お前が…訛ったんじゃ、ねぇの?」
「はぁっ……尚ちゃんと陣平ちゃん、二人とも早すぎ……」
もう知らん!と言って走り出した私を彼らは追いかけ、いつの間にか競争になっていた。
無駄に全力で走った私達は、図書館の前で息を切らしていた。
決して萩も足は遅くないしなんなら速い部類に入るのだが、幼い頃からかけっこはいつも私の方に軍配が上がっていた。
ただ、陣平にはどう頑張っても僅差で負けてしまい、先程だって私の方が先に駆け出したはずなのにまたギリ負けた。どうして。
まだ若干息が上がっている私は、額に滲んだ汗を拭って息を整える。
「はあ〜汗かいた……早く本借りてお風呂いこ」
「お前、ホント自由だな…」
ほらほら、と呆れる彼らの手を引っ張って図書館内に入れば、走った後の身体に丁度いい温度の空気が私達を包む。
その涼しさにほうっと息をついてから、私は目当ての本を探し始めた。
本棚の番号を辿りながら探すとそれは案外すぐに見つかり、私は満足気な顔で二人の方を振り返る。
「見っけたから借りて──」
「……あ、降谷ちゃんだ」
借りてくる、と言おうとした丁度その時、萩の声と被って私は口を噤んだ。
萩の視線の先には、恐らく一度見たら印象的過ぎて忘れられないであろう目立つ金髪。
一応釘を刺したとはいえ、陣平が過剰反応するので出来れば今一番遭遇したくなかった相手──降谷だ。
案の定陣平は、端のテーブルに向かって本を読みながら何か書いている彼の姿を見るなり、そちらへツカツカと歩き出した。
「ちょ、まてまてまて……!」
陣平ちゃん!という萩の声と私の制止も虚しく、彼はもう降谷の目前に居た。
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作者名:りもねん | 作成日時:2022年5月28日 14時