廿話 蝶屋敷にて ページ21
「カナヲー！！」
「！？」
いつものように縁側に座って蝶を眺めるカナヲに後ろから思い切り抱きつく。それから顔を覗き込んで、少し唇を尖らせた。
カナヲを放して隣に座りながら、足をぶらぶらさせる。
「やっぱりカナヲは無表情……どうやったら笑ってくれるの、カナヲ」
殆ど独り言だった。
要は不満なのだ。何を話しても、何をしても無表情なのが。
勿論カナヲを嫌いなワケじゃない。感情もあまり無いカナヲが笑うのが難しい事なんてよく分かってる。
それでも見てみたいじゃないか、カナヲの笑顔を。こんなに可愛い子が笑ったら凄い事になると思う。
「……Aは、表情がコロコロ変わる」
不意にそう言われて、目を丸くしたまま隣を向く。
「見てて、胸の奥があったかくなるの。笑ってる時は特に。怒ってる顔とか悲しい顔は、あんまり見たくない」
「…………そっかぁ。それは何だか、すごくうれしいな」
少しずつかもしれないけれど、心を開いてきてくれているって証拠だろう。半年間話しかけ続けた甲斐があるな、と思う。
同時に、私もそんな気持ちになってみたい、と思う。友達が笑ってると嬉しい、怒ったり泣いたりしないでほしい。そんな気持ちになってみたい。
実弥お兄ちゃんや家族に対しては何回も思った事があるけれど、カナヲに対しては思えていない。無表情だから。
早く来ると良いな、なんて。カナヲの笑顔で笑える日が来ると良いな。
「あら、Aちゃん来てたのね」
後ろから気配を感じて振り向くと同時に、そう声をかけられる。カナエさんが微笑みながら立っていた。
「おじゃましてます」
「いらっしゃい。お菓子、食べる？」
「いただきます！」
「よし、じゃあおいで」
カナヲの手を引いてカナエさんについて行く。茶の間には既に、蝶屋敷に住む女の子達が揃っていた。勿論しのぶさんも居る。
どうやら、これからお茶をするからカナヲを呼んでこよう、と思ったら私も一緒に居た、という事らしい。既に準備はされていて、机にはお饅頭や最中、お団子などのお菓子が並べてあった。
「あ、おはぎ」
「どうしたの？ いる？」
「実弥お兄ちゃんに持ち帰って行っても大じょう夫ですか？」
「勿論」
皆で食べるお菓子は、凄く美味しかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瘉月(プロフ) - ゆずさん» 原作は悲しいこともありますが…それ以上に楽しいこともあるので、楽しみにしています！ (2020年9月14日 21時) (
レス) id: c566db76b6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 瘉月さん» ありがとうございます！ 早く原作に入りたくてウズウズしているので、時間を見つけて更新しようと思います。 (2020年9月14日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
瘉月(プロフ) - 本当に面白いです！毎回見てます。頑張ってくださいね！ (2020年9月14日 17時) (レス) id: c566db76b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆず | 作成日時：2020年8月8日 21時
