佰弍拾陸話 その花を咲かせたのはだれ ページ28
騒ぎながらも訓練をしているのは我妻君と嘴平君。休憩で少し間を空けて私の隣に座っているのが竈門君。
名前を呼ぶと、竈門君は不思議そうな目を私に向けた。
「気をつけてね、これから」
「これから?」
うん、と頷く。
言われてる意味が分からないらしく、彼は首を傾げた。
「禰豆子の事だよ。お館様の事だから全隊士に通達はして下さったろうけど、納得してない人だって絶対に多い。柱だけが気難しいワケじゃないの」
「それは、分かってる」
「うん。だから、これから気をつけて。バッタリ会った隊士が殺そうとしてくるとか、あってもおかしくないから」
スっとその顔色が青くなった。柱合会議の事を思い出してるんだろうなぁ、なんて。
「分かった。ありがとう、忠告してくれて」
「お礼なんてしなくても。私が君達と行動してた理由をずっと隠してたお詫び」
「それこそ必要無いのに……」
何故か申し訳なさそうにする竈門君。
私はひょいと縁側から腰を上げた。
「もう行くのか?」
「うん。カナヲとしのぶさんに挨拶したら帰ろうかな」
「しのぶさんなら、多分今診療中だぞ」
「そうなの? じゃあカナヲにだけ」
ひらひらと手を振って庭を後にする。勝手知ったる何とやらでカナヲの部屋まで行くと、私が襖に手をかける前に襖が開いた。
「A」
部屋を出るところだったらしいカナヲは、私を見てそう声を上げた。その顔に嬉しさの様なものが浮かんでいる気がして、私は目を瞬く。
カナヲ、前に会った時はホントに無表情だったのに……。それとも前からこうだったっけ?
どちらにせよ無表情じゃない方が良いに決まっているので、取り敢えず私も口を開く。
「カナヲ、どこか行くところだった?」
「ううん。Aが来てるって聞いて、会いたいなって」
……!? 会いたいって言った? 今この子!
どういうワケか、カナヲが自分の意思で行動する様になっている……。
カナヲが、桃色の瞳を不思議そうに瞬いた。
「A、どうしたの? 嬉しそうな顔してる」
「……うん。私今、すっごく嬉しい」
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ゆず(プロフ) - りりりさん» ありがとうございます! 佳境に差し掛かっている掛け持ち作品がありペースは落ちていますが、そちらが終わり次第速くなると思います。 (2021年1月19日 18時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 面白く、一気に読ませていだきました!更新がとても楽しみです。 (2021年1月19日 17時) (レス) id: bc9653ee41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2021年1月1日 14時