夏の夜は

銀ノ魂篇／蕎麦と暗殺 ページ27

ギギ、と微かな音がした。
天井を見上げたAが「上！」と叫ぶのと同時、晋助はその場から飛び退く。

ついさっきまで彼が立っていた場所に、エリザベスがシャンデリアを落としたのだった。


エリザベスはスマホを晋助に向けると、パシャと１枚。


「何をあせっている、ただの写真だ」


小太郎は晋助に駆け寄ろうとするAを制し、エリザベスと晋助の間に立つ。晋助を親指で指す小太郎の写真をエリザベスが撮った。すぐさまネットにアップ。

今日も暗殺者に狙われたなう、との事だ。


「これはインスタ映えするな。流石エリザベスだ」

「インスタ映えって言うかニュース映え……」

「高杉、これからの世を動かすのはそんな刀(ぼうきれ)ではない。情報(ツイッター)だ」


どうやらドナルドヅランプ、インスタをやっているらしい。

例えばこの日。蕎麦の写真と共に、【今日はそばを食べたなう。この国もそばのように長くコシのある国にしたいものなう】。


「国のトップ自らが情報を発信し、それを国民と共有する」


次の日。【今日は暗殺者に狙われたなう】。


「それによって民に、共に国を作る気概と政事への興味を持ってもらう」


次の日。【今日はそばを食べたなう。この国もそばのようにツルッとズルッとありたいもの】。


「これくらいせねば、国のトップは務まらんぞ」


次の日。【今日は暗殺者に狙われたなう】。

ここに特筆しておくが、決してループしているワケではない。ちゃんと蕎麦の写真も暗殺者の写真も変わっている。


「こた君どんだけ蕎麦食べてんの！？ どんだけ命狙われてんの！？」

「ほぼそばと暗殺の情報しか発信してねェんだが」

「いや、この日は違うぞ」


白目を向いて泡を吹いている写真。【そばに毒入ってたなう】。


「そばと暗殺セットになっただけじゃねェか」

「絶対コレ見て狙われてるって！！」

「フッ、解っているさ。だから次はイキナリラーメンを食らってやったわ」


白目を向いて泡を吹いている写真。【二郎系ってハンパねェなう】。


「ほぼ結果同じだろ」

「高杉、ツッコむならAの様にもっと声を張ってくれ。しっかりしろ」

「ツッコミって何だ」

「お前……大ボケか！！ 解った、次からはお前がボケて俺とAがツッコもう」

「お兄マジか……」


銀時と小太郎と共に幼少期を過ごしておいて、ツッコミの概念を知らないとは。

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