銀ノ魂篇／松陽という名前 ページ14
登っている途中に子供の姿のそれが掴んでいた石が外れて、それは下に落ちそうになったのだ。銀時は咄嗟にその手を掴んで、安全な道になっている所まで引っ張り上げた。
変な事をしている自覚はあった。まるで自分を倒すラスボスでも育てている様な気分で、実際にそう、それに言ったのだ。
「私より強くなってくれなくちゃ」と言った松陽の言葉が浮かんできたから、何となく、本当に何となく、「お前もこんな気分だったのか」と訊いたんだ。
勿論返事が帰ってくるとは思っていなかったし、期待もしていなかった。でもそれは言った。
「いえ、違うと思いますよ」
その言葉は、口調は、銀時の足を止めさせるには充分だった。
「君の子供の頃に比べれば、私はまだまだかわい気のある方。手のかからないいい子だったでしょ。君は人一倍手のかかる、ヤンチャ者でしたからね」
銀時を育ててきたみたいな事を言う。
あの人の様に暖かい声で、そんな事を言う。
「だけどそこからは、君には頼りっぱなし。人一倍苦労をかけてしまったね。でも君が言うなら、最後にもう１度だけ甘えさせてもらうよ」
振り返った銀時に、それは笑った。
冷たい笑みなんかじゃない。
暖かくて、優しくて。吉田松陽の笑顔と、とてもよく口元が似ていた。
「手を貸してもらえるかい、銀時」
目を見開いた。驚いた、なんてものじゃなかった。
「松……陽……。お……お前、松陽…………なのかっ……」
「……松陽。懐かしい響きだな。終わる事のない長き
笠を取り、彼は微笑む。
「そしてそれを思い出させてくれたのは、どうやら君だ、銀時」
言葉を紡がれる度に、松陽だと思う。口調も声も言葉も、全部全部、暖かくて優しかったから。
「だから今のうちに、君に伝えておきたい。私が私であるうちに、話しておきたい。銀時、私は……」
言葉を途中で途切れさせ、松陽は目を見開いた。銀時を押し、彼を崖から落とす。
銀時に見えたのは、無数の錫杖が松陽の身体に突き刺さる光景だった。
銀ノ魂篇／終わりと未来→←銀ノ魂篇／龍穴に入らずんば師を得ず
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なのは(プロフ) - 更新しないですか？楽しみです！(>_<) (4月23日 0時) (
レス) id: d007c1ae64 (このIDを非表示/違反報告)
いな - 面白かったです！最初から一気に読みました！これからの展開が楽しみです！！ (2023年2月4日 10時) (レス) id: 200a1f85db (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 続きが気になって目が乾燥帯になってます、続きとかは、もう出ないんですか？ (2022年8月9日 10時) (レス) id: c4efed8c6d (このIDを非表示/違反報告)
春 - 続きはもう出ないんですか？気になって夜しか寝れません (2022年8月8日 22時) (レス) id: 79fd85110e (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - わかさん» ありがとうございます、候補に加えさせていただきます (2021年8月31日 20時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆず | 作成日時：2021年2月13日 0時
