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銀ノ魂篇/バイバイ ページ25

『侍の国』。

この国がそう呼ばれていたのは、今は昔の話。


かつて侍達が命を賭して護った江戸の空には、再び異郷の船が飛びかう。

かつて侍達が魂を賭して護った江戸の街には、再び異人がふんぞり返り歩く。


あれから2年。
戦いの爪痕を深く残しつつも、江戸は一歩ずつ以前の姿に戻りつつあった。






その男は電話を切ると、そっと息をついた。
適当に部下に指示を出した後、この2年間で何度も何度も読み返したそれをポケットから取り出す。

勿論何度読んだって、文面が変わるワケでは無い。それでもこれが、彼女との唯一の繋がりだったから。

変に角ばっている、クセのある雑な文字。共に過ごした10年ですっかり見慣れた、初めて会った頃から進歩の無い文字。
読む度に頭の中で、彼女の澄んだ綺麗なソプラノで再生される。


彼はそれを読んだ後、またポケットに仕舞う。自分を呼んでいる部下に手を上げて応じながら、浮かんだ淡い期待を無理矢理奥に押し込んだ。

ポケットの中で、その小さな紙が微かに音を立てた。



『総悟へ


本当は何も言わずに、書き置きだって残さずに、江戸をでるつもりだったの。でもアンタ、そうしたら会うまで私の事捜すでしょ。それは可哀想かなって思ったから、こうして書き置きしてあげてるんだから。感謝しな。

さて、さっきもちょっと書いたけど、私は江戸を出る。理由は内緒。いつ帰って来れるか解らない。一緒に置いてある辞表、ちゃんとトシなり近藤さんなりとっつぁんなりに提出しといてよ。頼んだからね。

総悟は優しいから、たとえ私が10年戻らなくたってずっと心配してくれると思うの。優しくないって反論は受け付けないから。だっていつまでも私の心配するのはどうせ事実でしょ。
でも、良いからね。いつまでも私の事ばっか見てないで、可愛い女の子見つけな。いつ帰ってくるか解らない私の事なんか忘れて、総悟は総悟の人生歩んでほしい。

憎まれ口ばっか言ってた気がしなくもないけど、まあ嫌いじゃなかったよ。そこそこ好きだったと思う。総悟の隣に居るのが1番楽しい程度には。
って、うわ待って、めっちゃ長くなっちゃった。それじゃあこの辺で。

バイバイ、総悟。


A』

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りら(プロフ) - わざわざお返事ありがとうございます!了解しました!楽しみに待ってます!!! (2021年2月13日 12時) (レス) id: da907c3bf1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - りらさん» すみません! 1話を書き次第こちらで公開させていただきます。 (2021年2月13日 12時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
りら(プロフ) - 初めまして!主さんの投稿楽しく読ませて頂いています。唐突で申し訳ないのですが、次作の「夏の夜は」のパスワードを教えて頂きたいのですが宜しいでしょうか…? (2021年2月13日 10時) (レス) id: da907c3bf1 (このIDを非表示/違反報告)
- ゆずさん» 失礼いたしました! (2021年2月2日 16時) (レス) id: 138fff996e (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 「月影」でも間違いではないと考え、そのままになっています。 (2021年2月1日 18時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず | 作成日時:2021年1月21日 18時

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