銀ノ魂篇/綻びに寄り添う贖罪 ページ41
「戦を始めた我等には、それを終わらせる責任がある。そしてそなたらの行き場を失ったその
喜々はそう言って、また促した。
「残らず撃て。それでもなお、我が民はその憎しみに耐え、戦を終わらせよう。
圓翔と喜々を撃ったその天人は、急に腕に力が入らなくなった様に銃を地面に落とす。
それを見た喜々は僅かに口元に笑みを浮かべると、前へ倒れた。
「喜々…………!!」
「しっかりしろ!! 早く!! 早く手当てを!!」
すぐに喜々に駆け寄って坂本が指示を出すが、「坂本様!!」と部下が慌てた声を上げる。
「救護班は喜々様の命で、皆陸奥様達の治療に残って……」
「!! 喜々……お前、」
「よいのだ」
坂本に、喜々は静かにそう返す。
彼は少し笑っていた。
「こうなる事は解っていた。将軍を弑し、将軍になった時から、ずっと」
どれ程の命を奪ったのだろう。直接手をかけてはいなくとも、自分の所為で亡くなった者など数えきれない。
そんな汚れた自分が、何事も無く穏やかな最期を迎えられるとは思っていなかった。
「これであの
唯一の心残りはそよだった。まだ兄を殺した自分を憎んでいてもおかしくないのに、むしろ憎んでいるべきなのに、彼女は『戻ってこないなら許さない』と言った。
これでは、許してもらえそうにない。
「___まだわしらの戦は終わっとらんぞ」
坂本が絞り出す様な声で言った。
「一度国を背負うた男が簡単に死ねると思うな、そうゆうたのを忘れたか。国の行く末を見届けぬまま、己のなした事を見届けぬまま、ゆくつもりか……
彼はぐっと拳を握る。
「お前は2度まで……わしらを、王を死なせた愚かな民にするつもりか!!」
「…………王……?」
怒鳴った坂本に、喜々は小さくそう呟いた。
もう目を開くのも辛い。
「私を……国を乱す事しかしてこなかったこの私を、そう呼ぶのか。自ら動かず他人を利用し、奪う事しかしてこなかった。その実家臣の1人すら得られなかった、この私を……」
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作者名:ゆず | 作成日時:2020年10月19日 19時