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銀ノ魂篇/絶望 ページ28

その時唐突に、嫌な予感がした。


その夜兎に刺さっているのは、どこか見覚えのある錫杖だった。
飛んできた方を見る間も無く、次々と飛んでくる錫杖が敵味方関係無く刺さってゆく。第3勢力の登場なのは、考えなくても分かった。

皆が異常に気付いて動きを止める。驚いている間に、笠を被った黒装束の連中が降りてくる。


「奈落!!」


奴等は私達に向かってくる。手前に居た夜兎が交戦しているからまだここまで届いていないのを良い事に、必死で頭を働かせる。


「な……何で……!? 奴等がここに……!!」


茫然としていた。驚いた、なんてもんじゃない。

そしてまた、嫌な予感。今迄のどれよりもハッキリとした冷たい感触が、胸を撫でる。


「君達の言う通りです」


戦場なのに不思議と耳に届く、よく通る……冷たい声。


「どうやら解放軍(かれら)には、君達を終わらせる力はもうないらしい」


目線を上げる。声のする方へ。

そうして目に入ってきたのは、やっぱり彼だった。


「いや。この地球(ほし)を護らんと集った力が、彼等のそれを上回ったというべきか……」

「「……虚!!」」


息が荒くなる。知らず知らずで拳を握りしめる。


「火之迦具土神の脅威に怯え狂騒する軍は、既に統率を失った烏合の衆。元より終わる事を恐れる彼等に、何かを終わらせる事などできるはずもなかったという事でしょうか。だがそれこそが、私が彼等に課した役割です」


「おい」と言われて我にかえる。握りしめていた左手に総悟の手が添えられていて、無理矢理拳を開かされる。

顔を見上げれば眉根が寄っていて、それで気付く。強い力で握り締めていた拳からは、爪が食い込んだ事による血が流れていた。


「あなた達のおかげで、火之迦具土神が稼働されるまでに戦況を泥沼化させる事ができた」


虚は飛び降りてくると、刀を振る。彼の周りに居た夜兎の上半身と下半身が別れ、血が噴き出る。


「その愚かさに、感謝します」

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作者名:ゆず | 作成日時:2020年10月19日 19時

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