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銀ノ魂篇/悪事をはたらきながら善事をはたらくいきもの ページ24

足元が揺れ、身体に振動が走る。それで、上手い事突っ込めたのだと分かった。

それまで翡翠色の右目に映っていた星々が見えなくなったというのも、それと分かった理由の1つだ。


彼は廊下を歩き、出入り口へと向かう。


「困るねェ」


出入り口が開いて段々と見えてくる天鳥船の内部の様子を見つめながら、そう言った。


「解放軍だから何だかしらねェが」


戦場では、誰もが動きを止めていた。動いているものといえば黒煙だけ。

皆が息を呑んで、その船を見つめ、その声を聞いていた。


「人のいねェ間に勝手なマネされちゃ、こちとら商売あがったりだ」


そして男が姿を現した。


小太郎と坂本にとって見慣れた紫がかった黒髪が見え、懐かしい服も見えた。

ただ1つ見慣れないのは、もう包帯の巻かれていない、閉じた左目。


「地球を壊す破壊兵器?」


船から飛び降りた彼が床に足を着く。

10年前戦場で共に戦っていた頃と同じその服が、着地に合わせてふわりと柔らかく揺れた。


「悪いがそいつの出る幕はねェよ」


何故なら、地球を……この世界を壊すのは、解放軍なんぞではないから。

ぽっと出の彼等に、10年目指してきた野望を横取りさせてたまるかと。


「この世界を壊すのは」


黒煙と瓦礫を背景に、彼は立ち上がる。


「俺だ」


高杉晋助はそう宣言し、不敵に笑った。


「あの地球(ほし)を、てめーなんぞにくれてやるワケにはいかねェな」


そう言った彼の()は、何者にも屈しない、不敵な()をしていた。

歩き出した彼に、「動くな!!」と怯えた様な声で解放軍が銃を向ける。


「そんなに怯えるなよ。安心しな、俺はここにいる誰の仲間でもねェ」


そう言いながら、晋助は歩き続ける。

誰の仲間でもない、その言葉には真実の響きがあった。


「誰の味方につくつもりもねェ。ただの、」


その顔は笑っていた。


「全宇宙の敵だよ」

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作者名:ゆず | 作成日時:2020年10月19日 19時

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