銀ノ魂篇/花も大義もいつかは散りゆく ページ20
長い沈黙の後、圓翔は「その通りだ」と言った。
だがそれは自身の過ちに気付かされた時の声音でなければ、自身の過ちを悔いる声音でもなかった。
「この戦に大義などない……いや、大義などは理由がなければ戦えぬ弱者のために用意された詭弁に過ぎぬ。私は最初からしっていたよ。天導衆を倒しても、我等が失ったものは返ってこない」
圓翔は首から下げていたペンダントを開いた。現れたのは、美しい女性の写真。
「星を……人々を解放しても我等が失ったものは返ってこない。ならば何故戦うのか」
星の消滅に巻き込まれ亡くなった妻の写真を見て苦しそうな表情をして、圓翔は言った。
「戦うしか……残っていないからだろう」
ドドドド、と銃声が鳴り響いた。
しかし倒れたのは銃を向けられていた圓翔ではなく、銃を向けていた天人達。額に穴を開けられ、即死だった。
その場の者が息を呑んで、銃弾の飛んできた方向を見た。壁に設置されていた銃から白煙が上っている。
「この憎しみを、この悲しみを癒やす術すら失った我々は、戦いの業火にそれらをくべ、燃やし続けるしかない。憎しみも悲しみも燃え尽き、灰になるまで……戦い続けるしかない」
それから彼はモニターの向こうの平賀源外に目を向けた。
「見た通りだ。既に我々は、同志の屍を踏み越えて戦う覚悟を決めている」
何が見た通りなのか。
誰にとってもさっぱりだったろうが、誰も口を挟めなかった。
「このまま夜が明ける前に
「皇子!」
監視カメラを見張っていた天人が緊迫した声を上げた。
そのモニターに映っているのは、走っている人間達……快援隊や、紫雀の姿だった。
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作者名:ゆず | 作成日時:2020年10月19日 19時