銀ノ魂篇／絶望と希望 ページ6
「入国管理局！？ 何をふざけた事を！！」
長谷川の言葉を聞き、銃を向けている天人が声を荒げる。
「そんなものは元より、既にこの国の政府は……！！」
「死んじゃいねェよ」
やけにきっぱりと言った。
それはただの願望なんかではなく、希望でもなく、ただ彼にとっての事実だったから。
「国が滅ぼうと、幕府が滅ぼうと、
今彼が見えているのは盗賊となんら変わりない天人達だけで、侍なんか視界のどこにも映っていない。
それでもそう言った。この江戸のどこかでは、かつて共にバカ騒ぎした侍達が立ち上がろうとしていると知っているから。
「アイツらは帰ってくる」
どこに行ったのかも、何をしに行ったのかも知らない。
それでもそう言った。絶対に戻ってくると知っているから。
「だからそれまで、俺達がこの国を護らなきゃならねェんだ。だからそれまで、俺達は絶望なんかしてられねェんだ」
今この国に、こういう時先陣切って戦ってたアイツらは居ない。この国を、アイツらの帰る場所を護れるのは自分達しか居ない。
神でも仏でも無い自分達がこの国を護らなきゃいけないって時に、絶望している暇なんか無いだろう。
「坊主。人間は、普段気づきもしねェが絶望の上で生きている」
自分の背後で愛犬を抱きしめる少年に言う。
明日職を失えば、明日飯を食べられなくなれば、明日寺子屋で脱糞すれば。ほんの少しのズレで、絶望は容易く自分達の前に口を開けるのだと。
「俺はそんな絶望の淵を眺めながら生きてきた。何故俺ばかりが、そう思ってた……だがあの日々は、この日のためにあったのかもしれん」
１日の大半を段ボールの中で過ごした事もあった。何日も食事にありつけない事もあった。
冬がとくに辛かったが、夏だって春だって秋だって辛かった。
「江戸全てが絶望に陥った時、それを底から支えるために。絶望の最後の番人となるために、俺は
でも今は、素直にそう思えていた。
「たやすく口を開くのが絶望ならば、希望もまた同じだ。俺にとってこの絶望は、無数にある絶望の１つに過ぎん」
これが失うものの無い奴の強さである。
「小銭１枚拾えばたやすくかき消える、安い絶望さ」
彼はそう言って歩き出す。
「さあゆこう。絶望の内にある、希望を拾いに」
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ゆい(プロフ) - ありがとうございます！ (2020年10月19日 20時) (
レス) id: a2d1753a5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ゆいさん» すみません、実は続編は、まだ1話も書いていないんです。書き次第公開しますので、それをお待ち下さい。 (2020年10月19日 20時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - すいません！心にもがパスワードがかかっているのですが教えていただけないでしょうか？ (2020年10月19日 19時) (レス) id: a2d1753a5f (このIDを非表示/違反報告)
菜々子(プロフ) - ゆずさん» 楽しみにしてます！！！無理はなさらないでください(TT) (2020年10月18日 22時) (レス) id: 53a94e4f14 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 菜々子さん» ストレートなご感想ありがとうございます！ いつ完結になるかまだ読めませんが、最後まで頑張ります！！ (2020年10月18日 20時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆず | 作成日時：2020年8月25日 15時
