銀ノ魂篇/届かない ページ20
「マズイ、あれはただの奈落じゃない」
頬や額に傷のあるその男を見て、信女が珍しく焦ったような声を出す。
「奈落三羽の最後の1羽、柩……!!」
攻撃するため、男が腕を交差させる。
___その腕を、銀時の木刀が貫通した。
力任せに彼は木刀を押してゆく。他の奈落を巻き添えに柩を押し、その背中には奈落達が持っていた刀が、口には銀時の木刀が刺さる。そうして、地面に背中から叩きつけた。
「師だ? 弟子だ? そんなもんここにはいねェ」
立ち上がってきた周りの奈落達をまとめて薙ぎ払ってから、虚を見た。
「俺の前にいんのは、ただの悪党だ」
虚に向けて走り出す。
「お前の前にいんのは、ただの万事屋だァァァ!!」
ふと、銀時は何かの気配を感じ取った。咄嗟にバク転の要領で立っていた場所を離れると、柩がその力で地面を粉々に砕いていた。
思わず舌打ちが洩れる。
「てめェもかよ」
柩は何も答えず銀時に向かってゆく。
一方、A達も奈落に囲まれ苦戦を強いられていた。
「大して強くもねェクセに……!」
2人一気に斬ってから、Aが焦ったそうな声を上げる。
「斬っても斬っても起きあがってくる。これじゃあキリがない」
空からゴゴゴゴと音が聞こえてきた。飛んでいるのは十数隻の船である。
Aと同時に空を見上げた信女が「くっ」と声を洩らした。
「時間切れか」
その言葉にAが唇を噛む。信女がそう言った理由は分かっていて、それでもこのまま終わりたくないのだ。
「私が経路を確保する。逃げて。虚と解放軍を同時に相手にはできない。ごめん、私の読みが甘かったせい」
あの不死身の男は、不死身の軍団は、今の彼女達だけでは倒せない。
「届かない」
虚が言う。
銀時が背を柩に斬られ、振り向きざまに柩を木刀で殴る。飛んでいったその頭を踏み越えて、跳ぶ。
「君の剣は」
黒煙が立ち昇る中、銀時は木刀を振り上げる。
「私には届かない」
「虚ォォォォォォォォォォ!!」
銀時が木刀を振り下ろした、その瞬間だった。
退避していたA達は眩い光に思わず後ろを振り返る。
ドォォン!!
落とされた爆弾の衝撃で、銀時は背中をコンテナに思い切り打ち付ける。その腕を誰かがグイと引っ張った。
「早く」
信女である。解放軍の船から爆弾が次々落とされる中、2人は必死で走る。
そして避けられない位置に落とされると悟った時、信女は銀時を海に突き落とした。刀が宙を舞った。
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ゆい(プロフ) - ありがとうございます! (2020年10月19日 20時) (レス) id: a2d1753a5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ゆいさん» すみません、実は続編は、まだ1話も書いていないんです。書き次第公開しますので、それをお待ち下さい。 (2020年10月19日 20時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - すいません!心にもがパスワードがかかっているのですが教えていただけないでしょうか? (2020年10月19日 19時) (レス) id: a2d1753a5f (このIDを非表示/違反報告)
菜々子(プロフ) - ゆずさん» 楽しみにしてます!!!無理はなさらないでください(TT) (2020年10月18日 22時) (レス) id: 53a94e4f14 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 菜々子さん» ストレートなご感想ありがとうございます! いつ完結になるかまだ読めませんが、最後まで頑張ります!! (2020年10月18日 20時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2020年8月25日 15時