さらば真選組篇/貴方に死んでほしくない ページ5
その日はずっと、朝から嫌な予感がしていた。
嫌な予感が正体を現したのは、国葬の警備からパトカーで屯所へ戻る、その途中の事。
運転席の総悟も助手席のトシも、ずっと黙っていて。私も能天気に話す事なんて出来なかったから、重苦しい車内の空気から逃げる様に窓の外を眺めていた。
前方に見廻組が罪人を運ぶ時に使うパトカーが見えたから、何となくそれを目で追う。
すれ違う瞬間、3人して目を見開いた。
「……え?」
私が青ざめて呟くと同時、総悟が一気にパトカーのスピードを上げる。
それはきっと、早く確かめたかったから。さっき運ばれていたのは近藤さんじゃないって事を。近藤さんは今もちゃんと屯所に居るって事を。
でも私達が屯所に着いた時、そこの様子は明らかにおかしかった。見廻組の連中が門に立ち塞がっていて中に入れないし、真選組の隊士達が奴等に掴みかかっている。
屯所に近藤さんが居るなんて、とても思えなかった。
状況が全く飲み込めなくて辺りに忙しなく目線を走らせていると、ふとよく目立つ銀髪が目に入る。松葉杖をつきながらゆっくりと屯所から出てくる彼に気付くと、真選組の隊士達はその動きを止めて銀ちゃんを見た。
彼は私や総悟やトシの所まで来ると、こう言った。
「すまねェ」
☆☆☆☆☆
夜。屯所に入れなかった私達は、森の中の寺に集まっていた。銀ちゃんもついて来てくれていて、彼は今外の階段に座っている。
「ふざけんじゃねェ!!」
誰かがそんな怒鳴り声を上げる。
「局長が一体何やったってんだ。喜々の奴、将軍暗殺の責任を全てなすりつけるつもりか!?」
「乗り込もう!! 喜々の所へ!! どうせ真選組も潰される!! 仕える主君ももういない!! だったらこの命、俺達の大将を救うために使おう!!」
「……それでも、生きろと言ったんだろう」
静かな声でそう言ったのは、入り口近くの壁にもたれるトシだった。皆が怒鳴り声を収める中、やっぱり静かに続ける。
「たとえ真選組が組織として消えても、たとえ閑職に追いこまれ散り散りになっても。それぞれが真選組として、自分のやる事をやれと。近藤さんは、そう言ったんだろ」
銀ちゃんが言っていた。近藤さんは連行される前、「江戸には私達が必要だ」と言っていたと。
……でもさ、近藤さん。
そんな事、言われても……。
97人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しらぬい - そうなんですね!急かしてしまう形になってすみません…!楽しみにしています〜! (2020年6月17日 19時) (レス) id: 411c9be34b (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - しらぬいさん» ありがとうございます。見廻組の2人良いですよねホント……。「たち別れ」はですね、まだ1話も書いていないんです。夜には公開できると思います。 (2020年6月17日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
しらぬい - さらば真選組篇 前半お疲れ様でした!異三郎と信女の過去はやっぱり泣けます……。 ところで質問なのですが、パスワードが分からず「立ち別れ」に入れませんでした……パスワードを教えて頂く事は可能ですか? (2020年6月17日 19時) (レス) id: 411c9be34b (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - まめさん» 分かります、原作読んでる時まさかの事実に泣いてました。髪飾りはですね、今後の展開(多分後半の方)を楽しみにお待ちいただければと思います。 (2020年6月17日 8時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - さらば真選組篇前半完結おめでとうございます! もうこの時点で泣けますね...これから壊れた髪飾りもどうなるか気になります..! 完結まで駆け抜けて下さい!ついていきます!! 体に気をつけて更新頑張って下さい! (2020年6月17日 0時) (レス) id: 7bb68938d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆず | 作成日時:2020年6月3日 8時