わびぬれば

さらば真選組篇／ボートの漕ぎ方 ページ26

「思った通りだ、島(あっち)でも何か起きてやがる。あの厳戒態勢を正面から突破すんのは無理だ」




手漕ぎのボートに乗って単眼鏡で島の様子を眺めながら、銀時は言った。




「大型船を捨て緊急用小型艇に乗り換えて正解だったな」


「てめェらが暴れ過ぎて船沈めちまっただけだろーが！！ なんであんな島(ところ)まで手漕ぎでいかなきゃなんねェんだ！！」




真顔の銀時に青筋立てて土方が怒鳴る。


そう、ボートに乗っているのは見つからない為とかそういう事では無く、ただ単に船がボロボロになってしまったからだった。主に万事屋の暴れっぷりによって。途中からAも入ってたかもしれないけど。


が、当の万事屋が乗るボートは、悠々と土方の乗るボートを追い越していく。




「戦況は刻一刻変化してんだヨ。モタモタしてたらてめェらの大将首になっちまうアルヨ、グズども」


「てめェらはいいよね、変なチャイナモーターつけてっから！！ こっちの身にもなれよ！！」




いいのかアレ。神楽による物凄いスピードによって新八が落ちそうになってるけどいいのかアレ。


銀時は土方を振り返るとゲスい顔をする。




「オイオイ、ひょっとしてあれしきの小競り合いで早くもバテてんの君達。やれやれ、まだ戦は始まってもいねェんだぜ。真選組と桂一派、しょせんてめェらが手ェ組んだ所で万事屋単体にも敵わねェって事だな」


「漕げェェェェェェェェェ！！」




銀時からのあかさまな挑発に乗った土方が、真選組と桂一派に向けて怒鳴った。




「真選組も攘夷志士も関係ねェ、協力して奴等より早く島につけェェ！！」




一体どこを競っているのだろうか。


が、土方と同じボートに乗る筆談２人(？)がプラカードとスケッチブックで何と返したかというと。




【ついにプラカードの出番だな。オールに形似てるし、お前もコレでいこう】


【じゃあ私はノートで声援をおくろう。ファイト！！】




で、また殴り合いになった。


コイツらもコイツらでどこを競っているのだろうか。




最早無言になる土方のボードを、それまで後ろに居た他のボートが追い越していく。




「……じゃあ、副長お先に」


「失礼します」


「どーも」


「ちょっと待てお前らァァァァ！！」




ドガァァ！！




最後には沖田によって手懐けられたホオジロザメが引く沖田とAの乗るボートに轢かれた。

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