わびぬれば

さらば真選組篇／何もかもがバラバラ ページ21

《それゆえに人は自由に焦がれる。まるで決して手に入らない冒険小説の宝物に焦がれるように。そう、「自由」という言葉は甘言に過ぎない。生きるという事は何かに囚われ続ける事なのだ》




囚われている近藤さんを救い出す為に船に乗っている筈の小銭形さんの独り言が段々変な方向に行っている気がして、隣のトシに目を向ける。


トシは何を思ったのか、少し後ろに下がって走り出す体勢になっていた。




《つまり近藤勲に真の自由を与えるには》




トシが小銭形さんに向けて一直線に走り出して、




《このまま彼を処刑させてやる事が、！》




ドッ、とトシの飛び蹴りが小銭形さんに炸裂した。


ナイスタイミング。




「要するになんだ、お前は俺達を邪魔しにきたんだな。このままハードボイルドに処刑(じゆう)になりたいワケだな」




船の先に掴まって海に落ちないようにしている小銭形さんの指を踏みつけてトシが海に落とそうとする。


いやぁ、トシが元気になってホントに良かった。




「副長、アホとアホやってないでさっさと囚人服(コイツ)に着替えるでやんす。ホラ、Aさんも笑いながら傍観してないで」




小銭形さんの部下だというハジという子が、私とトシにそう声をかけてくる。




「入る者は古今東西の極悪人、出ていく者は死人だけ。獄門島と並び地獄と称される監獄 黒縄島に侵入するためにはそれしかない」


【つまり囚人にまぎれ潜入するのだ】


「「何者にもまぎれこめてねェけど！！」」




ただでさえ怪しいビジュアルのエリザベスが縞々の囚人服を着ている姿にトシと思わずツッコんだ。


真選組は真っ白の囚人服なのに桂一派は縞々だから、この中ででさえも変な感じになっている。




「囚人の前にまず人間にまぎれてくんない！？」


【だからプラカードは目立つからノートにしろと言ったんだ】


【何で私が！！ お前がプラカードに合わせろ！！】


「そういう問題じゃねーよ！！ 他に合わせるトコあんだろ！！」


「終君どこで喧嘩してんの……」




筆談同士気が合うかと思えば真逆らしい。しまいにはエリザベスが終君の上に馬乗りになって殴り始めた。


お前ら服装だけじゃなく心もバラバラかよ！！

さらば真選組篇／いつも通りが嬉しくて→←さらば真選組篇／脱獄

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す