将軍暗殺篇/生きる痛み ページ17
走っていた茂茂の足が止まったのは、見覚えのある姿達に気付いたからだった。
「どこに行かれるんで」
「逃げてる顔には見えないですが」
柱にもたれて腕を組む銀時と、固い表情のAだった。
「将ちゃん、これ以上はいかせられないアル」
「どうかここは僕らに任せて早く避難してください」
彼の後ろから現れた神楽と新八も口を揃える。
茂茂は俯くと、「どいてくれ」と絞り出す様に言った。
「解っている、皆が余のために戦ってくれているのは。……だが、これ以上私のために人が死にゆくのは見ていられ、」
ドン!!
茂茂の顔スレスレに銀時が木刀を刺す。
「銀ちゃん!」と咎める様なAの声を気にせず、銀時は茂茂を真っ直ぐに見て口を開いた。
「じゃあ死ぬか。全部ほっぽり出して、ここで」
茂茂を真っ直ぐに見る目は、やはり死んでいる。それでもその奥に、何かがあった。
「今迄アンタのため死んでった命全部ブン投げて、楽にしてやろうか。それとも無数の屍踏み台にして、それでも生きるか。アンタの好きな方を選べ」
何も言えずに俯く茂茂に、銀時は言葉を重ねる。
「1ついえんのは、
銀時が言い終わった直後、轟音が辺りに響いた。
船が崖に当たった事で落ちてきた大きめの石が、新八へと落ちていく。思わず顔を腕で庇うようにした彼に、しかし痛みはやって来なかった。
どこからか飛んできたクナイが、石を払ったのだ。
「将軍、アンタ」
投げたのは将軍であった。
彼はクナイを拾うと思い出す様に言う。
「昔、投げ方を教わった。御庭番衆に」
そしてクナイを見つめた。
まるでそこに思い出が映し出されている様に。
「彼等は私にとって、ただの家臣ではない。大切な友人なのだ」
A達を見るその目は、酷く悲しそうだった。
「頼む、行かせてくれ。私は彼等を、全蔵を死なせたくはない」
ふと気配を感じたAと銀時が、上を見上げて目を瞠る。
「やってくれるねェ、服部全蔵」
崖へとぶつかっていたその船の上に、黒衣に番傘をさした集団が居た。
「だがどうやら勘があたったらしい。奴さんはどうにも臭ェ、何か隠してると思ってたんだ」
阿伏兎はそう言うと、茂茂を見てニヤッと笑った。
「本物の将軍の首、みーっけ」
84人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆず(プロフ) - 恋成さん» 3日でって凄いですね! ありがとうございます、本当に嬉しいです。長文むしろありがたいです、これからも頑張ります! (2020年6月2日 21時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - まめさん» ありがとうございます! 分かります、最後泣きますよね。そよちゃんが何も知らないのが、もう……。空知先生半端ない。体調に気をつけて頑張ります! (2020年6月2日 21時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
恋成 - 将軍暗殺篇完結、お疲れ様でした。今更ながら銀魂にハマった私、学校が始まったにも関わらず、3日でシリーズ全てを読み切りました。とても面白く、のめり込んでいきました。これからも楽しみにしています。長文失礼しました。 (2020年6月2日 21時) (レス) id: 6d3a560269 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - 将軍暗殺篇完結お疲れ様でした! これ最後のそよちゃんと将軍様のやり取りで泣きました。。タイトル回収するとは思わなかったですねこれ、、 今回も楽しく読ませていただきました!次も楽しみにしてます! 体調にお気をつけてくださいね! (2020年6月2日 19時) (レス) id: 7bb68938d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - しらぬいさん» 分かります、烙陽決戦篇も良いですよね! ちゃんとお兄ちゃんしてる神威と攘夷四天王の共闘が最高です。百人一首は毎回頑張って選んでいるので、そう言っていただけて本当に嬉しいです! (2020年6月2日 16時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆず | 作成日時:2020年5月26日 23時