将軍暗殺篇/ウンザリする程知っている ページ15
「そなたらにできるか。あの服部の小僧のように、将軍を殺す事が」
「どういう事ですか」
驚いて訊いた新八に、百地は語り始めた。
百地が全蔵と会ったのは、伊賀が春雨に蹂躙されてから1ヶ月後の事だった。
その時伊賀は真っ二つに割れていた。春雨に従い将軍暗殺に協力しようとする藤林達恭順派と、春雨の要求を拒み徹底抗戦の構えの百地達主戦派に。その2つの派閥はぶつかり合い、里は内乱寸前の緊張状態となった。
そこで百地が頼ったのが、もう1人の三大上忍である全蔵だった。江戸に拠点を移したとはいえ、未だ里の誰もが一目置く名門。彼を味方につければ藤林を止められる、そう思ったのだ。
しかし既に敵方に潜り込み情勢を探っていた彼は知っていた。将軍の敵は初めこそ一橋喜々を擁するただの過激攘夷浪士だったが、今では抗いがたい巨大勢力に膨れ上がっている事を。
_____そして、将軍が将軍であり続ける限り敵の手は止まず護る事は出来ないという事を。
将軍を護り、伊賀を護り、これ以上戦禍を拡大させないためには1つの方法しか無い。
つまり、
「将軍徳川茂茂を殺し、ただの徳川茂茂に戻すこと」
全蔵が斬ったのは、将軍でも影武者でもない。将軍という器そのものだ。
つまり彼は、将軍 徳川茂茂の死を偽装し官位を返上、社会的に抹殺する事で、人間 徳川茂茂の命を護ろうとした。
「そのためにあの忍
『アンタ、ホント昔から変わらないわね。協調性も信条もなし。自分の技しか信じちゃいないんだから』
『そいつが
『そう。本当に忘れちゃったのね』
忘れてなんかいなかった。
茂茂に救われたあの日の事も、茂茂と過ごしたあの日々の事も、茂茂のあの日の言葉も。
全部全部、全蔵は忘れてなんかいなかった。だから、きっと……
さっちゃんは何も言わずに飛び出して行った。
「将軍生存の報は誰にも伝えるな。将軍を死なせたくないなら、これ以上誰も死なせたくないならな」
「奴等が将軍の首とったくらいでおさまるタマだとでも?」
「しっておるのか、敵を」
立ち上がりながら言った銀時に、どこか悲しそうなAに、百地はそう訊いた。
「しってるよ」
「ウンザリする程にな」
こちらへ向かってくる幾つかの船が見えた。
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ゆず(プロフ) - 恋成さん» 3日でって凄いですね! ありがとうございます、本当に嬉しいです。長文むしろありがたいです、これからも頑張ります! (2020年6月2日 21時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - まめさん» ありがとうございます! 分かります、最後泣きますよね。そよちゃんが何も知らないのが、もう……。空知先生半端ない。体調に気をつけて頑張ります! (2020年6月2日 21時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
恋成 - 将軍暗殺篇完結、お疲れ様でした。今更ながら銀魂にハマった私、学校が始まったにも関わらず、3日でシリーズ全てを読み切りました。とても面白く、のめり込んでいきました。これからも楽しみにしています。長文失礼しました。 (2020年6月2日 21時) (レス) id: 6d3a560269 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - 将軍暗殺篇完結お疲れ様でした! これ最後のそよちゃんと将軍様のやり取りで泣きました。。タイトル回収するとは思わなかったですねこれ、、 今回も楽しく読ませていただきました!次も楽しみにしてます! 体調にお気をつけてくださいね! (2020年6月2日 19時) (レス) id: 7bb68938d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - しらぬいさん» 分かります、烙陽決戦篇も良いですよね! ちゃんとお兄ちゃんしてる神威と攘夷四天王の共闘が最高です。百人一首は毎回頑張って選んでいるので、そう言っていただけて本当に嬉しいです! (2020年6月2日 16時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2020年5月26日 23時