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バラガキ篇/立派な兄弟 ページ10

「ったく、情けねェ野郎だ。そんな調子じゃ1日もたたずに浪士どもに斬り殺されるぜ」




稽古場で荒い息を吐きながらグッタリと倒れる鉄に、竹刀を持ったトシは汗一つかかずに言った。


稽古の様子を眺めていた私は、ニヤッと笑って言う。




「トシ相手にそんなボコボコにされてるようじゃ、私と手合わせしたって10秒で終わるよ」


「お前との勝負を長引かせられるのなんざ総悟くらいしか居ねェだろ」




えへへ。




「死にたくねーなら強くなるこった。晩飯までに三千回素振りしておけ」


「うわ鬼畜。流石鬼の副長」




歩き出したトシに笑いながら言って、私も腰を上げる。


一歩目を踏み出した時、「副長」と鉄が声を出した。




「自分、強くなるっス。きっと……兄貴より、副長より、Aさんより、強くなってみせるっス。もう2度と立ち止まらないように。早く……みんなと一緒に……同じ道を歩めるように」




まだトシに受けたダメージが残っているだろうに、言葉を途切れさせながらも言う。




「だ……だから、副長も強くなってください」




唐突なその言葉に、トシが疑問符を浮かべる。




「副長の兄上は……副長の事を恨んでなんかいませんよ。きっと副長に会いたがっています」




トシは自分の昔話を人にするような性格じゃない。


きっとその事を知っているのは近藤さんくらいで、だから鉄がお兄ちゃんの事を知っているのに目を瞠っていた。




「だって……副長は小さい身体で、必死に兄上を護ろうとしただけじゃないですか。兄上は……必死に副長を護ろうとしただけじゃないですか。立派な……兄弟です」




その声には、羨んでいるような色があった。




「自分は副長が羨ましいです。だから、どうか兄上から逃げないであげてください。アナタ、バラガキのトシでしょ」




トシはまた踵を返して、稽古場から出て行こうとする。


私もついて行こうとしたら出入り口の所で立ち止まるから、少し驚いた。




「ったく、どこのどいつだ。アホに余計な事吹きこんだ奴ァ。いいか、今度俺の前でその名を口に出してみろ」




今度こそ障子を開けて出て行く。




「全身の穴にマヨネーズぶち込んで殺すぞ。Aもいいな」


「あいあいさ、バラガキのトシさん」


「殺す」




綺麗で大きな満月が、夜空に浮かんでいた。


トシの紫煙が立ち昇った。

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ゆず(プロフ) - りさん» ありがとうございます! バラガキ篇大好きなので、ドンドン更新していけたらと思います。全力で頑張ります! (2020年4月23日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
- 続編おめでとうございます!!これからも頑張ってください全力で応援してます!! (2020年4月23日 19時) (レス) id: e466fb159c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず | 作成日時:2020年4月23日 12時

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