もう良いから ページ36
「……アレ?」
お姉ちゃんの入院、2日目の夕方。
ずっとガラスに手を付いて
その声に顔を上げると、彼女は一層食い入るように見つめている。
「どうしたの?」
訊くと、彼女は長椅子に座る私達3人を振り返らずに、「今、」と口を開いた。
「今、よつ姉の手が少しだけ動いたような……」
え?
「新八、医者呼んでこい!」
「はい!」
銀ちゃんに指示されて、新八は廊下をバタバタと駆けて行く。
私と銀ちゃんも、神楽と同じようにガラスに手を付いて向こう側をジッと見た。
「動いたって……?」
「オイ本当なんだろうな、神楽」
「本当アル、さっき一瞬……ホラ!」
本当だ。
本当に少しだけだけど、指が動いてる。
食い入るように見つめていると、瞼もピクリと動いているような気がした。
足音が近付いてきたのでそっちの方を見ると、新八がお医者さんと看護師さんを連れて急いでこちらに来ていた。
お医者さんと看護師さんが病室に入る頃には、お姉ちゃんはすっかり瞼を開いていた。
何か処置をしようとするお医者さんの手を、暫く振りに動いたその白い手が掴む。
「笠井さん? どうしましたか?」
「……もう、良いです」
そんなか細い声が、ガラスの向こうから聞こえた。
「何を言って、」
「だって」
医者として患者を助けようとする彼に、お姉ちゃんは悲しそうな表情で口を開く。
「分かるんです……自分が、もう……数時間も、生きられないって……いうのが」
苦しそうに言葉を途切れさせながら、お姉ちゃんはそう言う。
私の横の銀ちゃんが、拳を強く強く握り締めたのが分かった。
「だから……もう、良いです……ありがとう、ございました……後は、大切な人達と……お喋り、して……逝きたいんです」
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ゆず(プロフ) - りさん» ありがとうございます! バラガキ篇大好きなので、ドンドン更新していけたらと思います。全力で頑張ります! (2020年4月23日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
り - 続編おめでとうございます!!これからも頑張ってください全力で応援してます!! (2020年4月23日 19時) (レス) id: e466fb159c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2020年4月23日 12時