兄達 ページ30
「で、A」
退院直後とは思えない形相で、トシが正座する私を見下ろす。
「はいっ」と返事をしてからチラリと斜め前を見たけれど、そこに座る近藤さんには目を逸らされた。
その隣の総悟にはハナから期待していない。
ここ、私の部屋の筈なのに……何でこんな……。
「万事屋が白夜叉だってのは、知ってたのか」
「……知ってたと言えば知ってたし、知らなかったと言えば知らなかった」
「あ?」
煮え切らない私の返事に、トシがドスの効いた声を出す。
それにビクッとしてから、そろそろと目線を上げた。
「いや、攘夷戦争に参加してたのは知ってたから……。お兄とこた君に異名が付いて攘夷四天王だなんて呼ばれてるのに、銀ちゃんだけ無名とかあり得ないな、って思って。本人から聞いたワケじゃなかったから、推測に過ぎなかったけど」
私がそう説明すると、「ちょっと待て」と言われた。
頭が痛そうに額を押さえたトシは、暫くして落ち着いたのか、手を外してまた私を見る。
「『お兄とこた君』ってのは、もしかして……」
「……あ、高杉晋助と桂小太郎です」
「「「はァァァァァァ!?」」」
トシと総悟と近藤さんの驚きの声がハモった。
トシと総悟まで珍しく目を見開いて、私を凝視している。
「……一応訊くが、内通とかは、」
「してないです」
「答えが早ェ」
食い気味で答えると総悟にツッコまれた。
いや、してない事はしてないって否定しないと。
マジで粛清される。
「でもマジで、銀ちゃん以外には全然会ってないんだよ。今どこに居るのかも知らないし」
「本当だな?」
「本当、本当」
嘘ついてる目に見える? と言うと、「見えねェ」と即答された。
私が嘘つくの下手なのはご存知の筈なので、信じてもらえた……筈だ。
「あの攘夷四天王の内3人が兄貴ねェ……」
「本当はもっと居たんだけどね、攘夷戦争で死んじゃった」
「Aのお兄さんってのは、要はAを拾った人の開いた私塾の生徒だろう? 何でそんなに攘夷戦争に参加してるんだ?」
近藤さんの問いに、松陽先生の姿が思い浮かぶ。
知らない間に連れて行かれて、知らない間に死んでしまった、私に全てをくれた人。
「……先生を、取り戻す為」
三日月の髪留めを触りながらそれだけポツリと言うと、それ以上は誰も追及してこなかった。
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ゆず(プロフ) - りさん» ありがとうございます! バラガキ篇大好きなので、ドンドン更新していけたらと思います。全力で頑張ります! (2020年4月23日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
り - 続編おめでとうございます!!これからも頑張ってください全力で応援してます!! (2020年4月23日 19時) (レス) id: e466fb159c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2020年4月23日 12時