バラガキ篇/自分らしく生きるとは ページ3
トシと私で、外での仕事があった。
自然に、パトカーの運転は鉄がする事になった。
「オイTETU、もうちょっと音小さくなんねーのか」
「え? よくきこえねーんだけど」
「だからもうちょっと音しぼれねーのか!」
「オッケーオッケーイ! 気に入ってくれた!? キてるだろこのリリック!」
こんなにもトシが苛立っているのも、2人の会話が縄文人と宇宙人レベルで噛み合っていないのも、全ては鉄がヒップホップを大音量で流しているからだ。
かくいう私も、耳が痛くてさっきから押さえている。
耳が人よりも良い所為か、大音量には弱いのだ。
「いや、TOSHIはそもそもヒップホップ大嫌いだから。A大丈夫か」
「何とか……」
「シット、TOSHI何すんだ!」
トシが音楽を止めてくれたお陰で、私の耳は何とか無事だ。
苛立ったような声を上げる鉄に、トシは溜息をつく。
「オイ鉄、お前いつまでこんな事続けるつもりだ」
鉄には、もう
最後のチャンスなのに。
「てめーのやり方じゃ社会じゃやっていけねーのは、てめーが1番思いしってる筈だ」
「お説教ならききあきたぜ。たとえTOSHIでも俺のやり方に指図はさせない。コイツが俺の生き方なんだ」
聞かん坊の子供みたいな事を言う鉄に、それでもトシは怒鳴らなかった。
ただ静かに、諭す様に言った。
「壁にぶつかった時にだ。そいつを見ないフリしたり開き直る奴は、いつまでたっても前に進めねェよ。何故なら
生きていればこの先、何枚も壁はある。
それでも皆、社会のやり方と自分のやり方の間で折り合いをつけて、はいつくばりながらも前に進んでいる。
それが本当の意味での、自分らしく生きるって事だろう。
「今のてめーは、耳触りのいい言葉並べてそいつを言い訳に壁の前でだだこねてる、ただのガキだ」
これ以上真選組の足ひっぱるなら、斬らなきゃいけない。
そう言ったトシに、鉄はやけくそみたいに叫んだ。
「どうせ俺は、生まれついての落ちこぼれなんだよ。だったら俺は俺のやり方で好きなように、生きて死んでやる!!」
そしてまたヒップホップを大音量で流し始める。
それから車を停めて、こっちを見ていたらしいバイクの運転手に喧嘩を売った。
……銀ちゃんだった。
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ゆず(プロフ) - りさん» ありがとうございます! バラガキ篇大好きなので、ドンドン更新していけたらと思います。全力で頑張ります! (2020年4月23日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
り - 続編おめでとうございます!!これからも頑張ってください全力で応援してます!! (2020年4月23日 19時) (レス) id: e466fb159c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2020年4月23日 12時