わたの原

潔白なんかじゃない ページ8

「刺されたァァァァァァ、大丈夫なんですかァァ、一体どこををを！！」




案の定、神山は大騒ぎを始める。




「ケツですか！！ アナルですか！！ アヌスですか！！ それとも肛門ですか！！」


「全部ケツだろ。あのさ、いい加減にしねーと刺すよホント」


「刺してください、隊長となら本望です！！」




何だ本望って。


取り敢えず霧江の脇差を神山のケツに刺しておく。




「六角屋の遺族には、宗春の死は攘夷浪士の凶刃によるものと伝えたはず！！ それを今さら何故！？ 六角宗春が死したは沖田隊長のせいではない！！ あれはっ……」


「ほっとけ。そいつは問題じゃねェんだ」




そう。霧江が自分を刺してきた事自体は、問題じゃない。


本当の事を知られるくらいなら、そうしてくれた方が良いんだ。




「ほっとくってまさか隊長、その娘つかまえもせずに野に放したんですか？」


「あんな小娘、何人かかってこようが問題じゃねーって言ってんだ」


「しかし隊長！！」




納得出来ないとでも言う様に、神山は言葉を続ける。


先程までとは違い、必死さがそこにはあった。




「まさか、父親を死なせた事を気に病んで……それならばっ……」


「そんなんじゃねぇよ」


「ならば何故！？ 自分我慢出来ないっス！！ 沖田隊長の潔白を証明してきます！！」




そう言って駆け出そうとした神山に、「潔白なんかじゃねェ」と返す。




「そいつはてめーが１番知ってるハズだ」


「隊長は何も悪い事なんてやってない！！ なのに何故人殺し呼ばわりされねばならんのですか！！ 全部正直に話してきます！！ もう我慢できません！！」




それだけはやめろ。


神山の肩を力一杯掴む。




「ほっとけって言ってんのが聞こえねーのか」

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