わたの原

拳と言葉 ページ6

「……銀さん。僕、霧江さんが仇討ち考えるのもわからなくもないですよ」




桂から六角事件について聞いた後、銀時と並んで歩きながら、新八はこぼした。




「でも、沖田さんを責める気にもなれません。これは不慮の事故じゃないですか。江戸を護ろうとして起こってしまった、不幸な事故でしょ」




そう、眉を下げる。


そして、いつも飄々としている彼の姿を思い浮かべた。




「沖田さん、覚えてないんじゃなくて忘れたいだけなんじゃないでしょうか。今さらほじくり返して仇討ちなんてしたって……霧江さん、もっと不幸になるだけですよ。止めないと」


「心配いらねーよ。神楽がついてるだろ」


「それが心配なんでしょ！！」




沖田と神楽はいつも喧嘩ばかりなんだから。


さっきだって、タバスコが大量に入ったケーキを食べちゃって怒り狂っていたんだから。




だけど銀時は、気の抜けた様な顔をして「大丈夫さ」と言う。




「アイツはわかってるよ。伊達に何度もブツかっちゃいねェ」




拳を交わした者っていうのは、時には言葉を交わした者よりも分かるものだ。


昔の銀時と、翡翠色の目をした彼が、そうだったように。




「おかしいと思わねーか。命狙ってきた相手なら、女子供だって容赦なく叩き斬るのが沖田(やろう)だろう。それを殺るどころかつかまえもせずに、金まで置いて俺達の所に女を預けていった」




覚えてなくなんかない。


忘れたがっているわけでもない。




「沖田(やろう)は、多分……」

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