検索窓
今日:5 hit、昨日:33 hit、合計:84,243 hit

吉原炎上篇/干からびて ページ15

Aの予想通り、結構な重傷のクセに神威と鳳仙が戦っていた。




鳳仙の腕が阿伏兎の傘を、神威の腕が云業の傘を貫通する。




「そこまでだ。2人とも、落ちついてもらおう」




左腕を地面に落とした阿伏兎が言い、彼の背後で云業が倒れた。


神威は気にした様子も無く手に付いた血を笑顔でペロリと舐める。




「腕1本と1人であんたらの喧嘩止められれば上出来だ。コイツの命に免じて、どうか鳳仙の旦那、団長の不始末許してくれ」




阿伏兎が云業から鳳仙に視線を移す。




「残り少ない同族同士で殺し合うのは寝覚めが悪い。俺達ゃアンタと戦争しにきたんじゃねェ。よりよい関係を築きにきただけだ」


「まだ甘い汁が吸い足りぬか。いっそ、この吉原(まち)がほしいと正直に言ったらどうだ」




皮肉に笑う鳳仙に、阿伏兎が顔をしかめた。


この人に嘘は通じない。




元老(うえ)も怖いのさ。夜王の怖さは仲間だった春雨(オレたち)が1番知っている。アンタもこの街も巨大になり過ぎた。金だけじゃねェ、アンタが春雨(オレたち)を裏切らないという証がほしいのさ、ジジイ共は」


「大した仲間だ。隠居し余生を送る老いぼれにたかろうというのだからな」




「興が醒めたわ」。そう言って去ろうとする鳳仙に、阿伏兎が「旦那!」と声をかけた。


鳳仙は少し立ち止まる。




「金でも商いでも、好きにするがいい。そんな下らぬもの、わしはもういらぬ。だが、」




振り返ったその顔は、恐ろしく歪んでいた。




「この街を、わしの吉原(くに)を奪おうというのであれば、ぬしら、夜王の真の姿見ることになるであろう」




そうまた歩き出した鳳仙に、今度は神威が「興醒めしたのはこっちだよ」と呟いた。




「そんなに自分の作った玩具(おもちゃ)が大事か。ならばそのまま、吉原(ここ)で干からびて死んでゆけばいい」




その顔に、もう殺意(えがお)は浮かんでいなかった。




「あんたは殺すにも値しない」




そう言い捨てて、神威は飛び降りた。


その後を阿伏兎が追うのを眺めながら、鳳仙は呟く。




「干からびて死んでゆけ? フン、とうの昔に干からびておるわ」




鉛色の空を見上げる。


自分が作った、紛い物。




「陽も浴びられぬというのに、どうしてこんなに渇くものかな」

吉原炎上篇/パーチー→←吉原炎上篇/くせ者です



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (69 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
97人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 真選組 , 原作沿い
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆず(プロフ) - %さん» ありがとうございます! カッコいい女の子を目指しているので、そう言っていただけて嬉しいです! (2019年12月20日 0時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
- 続編おめでとうございます!夢主ちゃんが男前な感じがして凄くドキドキさせられてます!更新頑張ってください!応援してます! (2019年12月19日 21時) (レス) id: 02aec80553 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年12月16日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。