真選組動乱篇/もっと、 ページ32
落ちながら伊東の脳裏に浮かぶのは、幼少の頃の記憶だった。
折角満点をとった試験の答案用紙を母に見せようとすれば、「兄上の身体にさわるから静かにしなさい」と怒られた。
母が見ようとすらしなかったその答案用紙は、鴨太郎の手の中でクシャクシャになった。
もっと、もっと頑張らなければ。
もっと頑張れば、きっと僕を見てくれる。
学問所では、神童だと教師が褒めてくれた。
だけど頭を撫でてきたその手に温かさはなく、後ろを振り返っても冷たい目が並んでいるだけだった。
その目に見下ろされて殴ったり蹴られたりされたのは、その日の事だった。
もっと、もっと頑張らなければ。
もっと頑張れば、きっとみんな認めてくれる。
だけど。
「あんな子、生まれてこなければ良かったのに」
そんな、母の言葉を聞いてしまったから。
なんでみんな、僕を見てくれない。
こんなにも頑張っているのに。
僕は何も悪くないのに。
もっと僕を見てくれ。
もっと僕を褒めてくれ。
僕を、1人にしないでくれ。
隣にいてくれ。
僕の隣で、この手を……握ってくれ……
ガシッ
重力に逆らえず落ちていた筈の伊東の身体が、止まった。
その手を握っていたのは、近藤だった。
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哀(プロフ) - なるほどです!ありがとうございます! (2019年12月17日 18時) (レス) id: d4e761c72f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 哀さん» すみません! 次巻は用意をしただけで、まだ1ページも書けていないんです。でき次第すぐに公開します (2019年12月17日 16時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
アスミ - パスワード教えて欲しいです! (2019年12月17日 15時) (レス) id: 41e9138099 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - はじめまして!とても面白かったです!次の作品も読んで見たいのでパスワードを教えて頂けると嬉しいです! (2019年12月16日 16時) (レス) id: d4e761c72f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - %さん» 結構長いのに、2日で読んで下さるなんて…! とても嬉しいです。頑張ります! (2019年12月15日 22時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年11月29日 17時