侮辱 ページ44
「Aさん」
さっきから何名前で呼んでんだ気持ち悪ィ。
俺がまた苛立ってきたところで、隣のAが左手で俺の隊服の裾をギュッと握ってきた。
その右手は髪に付けた三日月型の髪留めへ伸びていて、コイツが自分を落ち着かせたい時にそれを触る癖がある事を知っている俺は、唇を噛む。
「僕の家、結構金持ちなんです。財産もいっぱいありますよ。それこそ、Aさんがずっとここで働いても追いつけないだろう額の」
真選組の給料は決して安いワケでは無いが、言う程高くもない。
男が告げた額は、確かに相当なものだった。
「それでも、ダメですか?」
一瞬、男が何を言っているのか分からなかった。
Aを金で釣ろうとしているのだと気付いた瞬間、Aが髪留めを触っていた右手で男の頰を思い切り叩いた。
「何それ。ふざけてんの? アンタ、私が金で動くような軽い女だと思ってんの……?」
さっきまで恐怖一色だったその表情は、今は激しい怒りと悔しさで染め上げられていた。
「い、いえ、そういうワケでは、」
「もういい」
遮る様に、Aが吐き捨てる。
「もう2度と顔見せないで」
それだけ言うと、Aは俺の腕を引っ張って屯所へと入って行く。
「待って下さい!」という声が後ろから聞こえたが、Aは振り返らなかった。
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年11月11日 17時