視線と常套句 ページ37
「……?」
お酒を飲みながら、私は小首を傾げる。
「どうした」
「なんか視線感じる」
訊いてきたトシにそう答えると、彼はぐるっと辺りを見回した。
私も同じ様に捜してみたけれど、視線の送り主と思われる人物は見当たらない。
「……まあ、気にすんな。どうせ今日で終わりなんだろ」
「うん。お妙に
相手がこの2人なら大丈夫だろうと別のテーブルへ移って行ったお妙を見て、私は苦笑いを浮かべる。
私と同い年の筈なのに歳上にしか見えないのは、あまりに世慣れしているからだろうか。
それにしては不器用だったけれどと、柳生家の騒動を思い出した。
ちなみにお妙が別のテーブルへ移ったにも関わらず何故近藤さんが静かなのかというと、未だに気絶しているからである。
「お前いつ終わりなんだ? これ」
「えっとね……あと1時間くらい。ここで働いてる子達と違って私は普通に明日も朝から仕事あるから、気ィ遣ってくれたみたい」
「そうか。丁度良いな、そんくらいになりゃ近藤さんも起きるだろ」
「……もしかしてトシ、終わるまで待っててくれるの?」
何気無い風に言われた言葉に私がニヤニヤしながら訊くと、トシは睨んでくる。
否定も反論もされないし何より耳が少し赤くなっているので、私は「素直じゃないな〜」とまた笑った。
「勘違いすんじゃねェぞ、丁度良いからだ」
「ツンデレの常套句頂きました!」
「誰がツンデレだ!!」
誰がどう聞いたって私と全く同じ反応すると思うんですけど、どう思います?
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年11月11日 17時