早く帰りたいでファイナルアンサー ページ35
目の前の鏡に映る綺麗な着物に身を包んだ自分の姿を見て、私は溜息をついた。
「まあ! 流石Aさんだわ、綺麗!」
隣で目を輝かせるのはお妙。
何故こうなったのかというと単純な話、お妙にスイーツを奢ってもらえると聞いて非番だったのもありノコノコ来てしまったのだ。
そりゃ、ちょっと不思議には思ったさ。
だけどまさかキャバクラの仕事を手伝わされるなんて、誰も思わないだろう。
「これ動きにくい。脱ぎたい」
「ダメです」
薄い桃色の着物には大きな赤や白の花が沢山描かれていて、当然スリットなんて入っていない。
頭に付けられた豪華な簪は、動く度に揺れて鬱陶しい。
終いには化粧までされた。
「私接客なんて出来ないよ」
「大丈夫です、私が同じテーブルにつきますし!」
「そういう問題じゃないんだよお妙……」
「それにしてもAさん暖色系も似合うんですね。普段黒と赤の隊服姿しか見ないから……」
「うん、言われてみたら私服も青とか黒ばっかだわ」
とっつぁんがくれた浴衣も、夜空の藍色だったし。
私がそんな別の事を考えて現実逃避をしていると、「それじゃあ行きましょうか」とお妙に手を引っ張られる。
ああああ、せめて知り合いが居ませんように……。
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年11月11日 17時