暗い海 ページ22
夜になった。
トシと山崎が連日転海屋の張り込みをしていたという場所に付いて行くと、そこは暗い海の見える港。
付いて来たはいいもののこれからどうしようか、なんて考えていると、ポケットの電話が音を鳴らした。
「もしもし? どーしたの、近藤さん」
『A。実はな、ミツバ殿の容体が急に悪化しちまったみたいだ。かなりマズイみたいで、家族の者はそれ相応の覚悟をしておけと』
思わず目を見開いた。
それ相応の覚悟って、それはつまり。
「ミツバ姉、死んじゃうの……?」
思わず口から溢れた声は、震えていた気がする。
私の言葉を聞いて電話の内容を察したらしいトシと山崎は、僅かに目を瞠った。
『分からん。だが、もしかしたら……。病院には来れそうか?』
今病院に行ったら、ミツバ姉の最期には絶対に立ち会える。
だけど、それ以外何もする事が出来ない。
「……分かった。行けるかどうか、ちょっと分からないけど」
『? そういえばお前、今何やってるんだ?』
「ちょっとね。……総悟の事、よろしく」
それだけ言って、電話を切る。
チラリとトシを見ると、彼は真っ直ぐに暗い海を睨んでいた。
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年11月11日 17時