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月の下で、アイツの分まで ページ10

1年中雨ばかり振るジメジメした街。


そこが俺達の巣だった。




日陰でしか生きられない連中が集まる魔窟……ハタからみれば汚いドブ川でも、ドブネズミには住みやすい場所だ。




「パピー、次はいつ帰ってくるネ?」


「今帰ってきたとこなのに、もうそんな話か」


「……もう、いかないでヨ、パピー。私、もう1人でマミーの苦しむ姿見たくないヨ。兄ちゃんも帰ってこないし、パピーも帰ってこない。……私寂しいネ」


「母ちゃんの病気もきっとスグよくなる。兄ちゃんももうスグ帰ってくる。それまで俺が金を稼いで、お前は母ちゃん護る。そう約束しただろ?」




そういってアイツを、あの汚いドブ川に、何度残していったことだろう。


それでもアイツは、ダメ親父の帰りを何度笑ってむかえてくれただろう。




結局母ちゃんが死ぬまでそのくり返し。


俺はアイツに、1度も暖かい巣なんてつくってやれなかった。




だからお前はこんな遠い所まで、巣なんか探しに来ちまったんだな……。




「……もうスグ出るぞ。そろそろ準備しておけ、神楽ちゃん」


「…………」


「薄情なもんだな。しばらく一緒にいたってのに、見送りにも来やがらねェ。結局アレか、なついてたのはお前だけで、連中はそうでもなかったってことか……」




『お前にゃ地球は狭いんじゃねーの。これでさよならとしよーや』




「まァそんなもんさ。俺達みたいな獣は、気味悪がられるか利用されるか、2つに1つ……大方俺達の暴れっぷり見てびびっちまったんだろ」




_____すまねェ、神楽。


お前にそんな顔は2度とさせたくなかった。全て俺に責がある。




俺に罪滅ぼしをさせてくれ。


さびしい思いは2度とさせねェ。




日の下で生きることができなくても、月の下で一緒に生きることはできる。




神楽……お前は俺が護る。


母ちゃんの分までな。

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ゆず(プロフ) - fubukiさん» ありがとうございます! これからもよろしくお願いします! (2021年2月22日 22時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
fubuki(プロフ) - 題名が覚えている百人一首の句なのでとても嬉しくなりました!面白いです。 (2021年2月22日 21時) (レス) id: 8d00889b6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - グリみいさん» ありがとうございます!そう言っていただけて凄く嬉しいです。更新頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いします! (2019年9月4日 18時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
グリみい - 感動して泣けました!!凄くこのシリーズが大好きです!!応援してます! (2019年9月3日 22時) (レス) id: 460e4835e5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず | 作成日時:2019年8月18日 10時

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