１人ぼっち ページ18
「神楽ァァ！！ オイッ、しっかりしろォ！！」
駆け寄って抱き起こす。
グッタリとしたその身体は、鉛のように重かった。
「おい、てめーら」
言い様のない怒りと悲しみに震えていたその時、今までとは比べ物にならない程の怒気を含んだ声が後ろから発せられた。
娘とそう歳の離れていないであろう彼女は、俯いたまま低い声で問う。
「だまって見てたのか」
俺はハッとして唇を噛む。
何を訊かれているのか分からない様子の２人を、お嬢ちゃんは顔を上げ、黄色い瞳で射抜く。
「助けてもらっておいて、神楽が、私の友達が弱っていくのを、だまって見てたのかってきいてんだよ」
その右手は腰にさした刀に伸びている。
斬りかかろうとするのを必死に自制しているかの様な様子だった。
「まままま待って！ だってこんな状況じゃ医者呼ぶにも……のう？ じい！」
「ワシに振るなァ！！ しらん！ ワシはしらんよ！ 今日からボケたから！」
未だに言い訳をするコイツらに、何かが切れた。
「てんめっ……！！」
俺が傘を振ろうとしたその時。
誰かの手によって、それは止められた。
「パピー、A、ダメヨ。せっかく私助けたのに」
見れば、お嬢ちゃんも刀を鞘から抜いていた。
彼女はそのまま、こちらへ駆け寄ってくる。
「神楽！ 大丈夫！？」
「もう大丈夫だ、父ちゃんが助けてやるから。もう安心しろ！」
「パピー」
喋るのも辛い筈なのに、神楽は言葉を止めようとしない。
「私……変わったでしょ？ 私の力、人を傷つけるだけじゃないヨ。人を護ることもできるようになったヨ」
「も……もういい、しゃべるな！」
「そういうふうにしたらネ、いっぱい友達できたヨ」
ピクッと、隣のお嬢ちゃんの肩が震えた。
「もう、誰も私を恐がったりしないアル。もう１人じゃないネ」
また唇を噛む。
血が出ているけれど、気にしなかった。
「戦って戦って、夜兎滅びたネ。戦って戦って、夜兎１人ぼっちになってたネ。パピーも兄ちゃんも、みんな……。戦わなきゃいけないのは自分自身アル。このままじゃ、みんな１人ぼっちになってしまうヨ」
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ゆず(プロフ) - fubukiさん» ありがとうございます！ これからもよろしくお願いします！ (2021年2月22日 22時) (
レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
fubuki(プロフ) - 題名が覚えている百人一首の句なのでとても嬉しくなりました!面白いです。 (2021年2月22日 21時) (レス) id: 8d00889b6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - グリみいさん» ありがとうございます！そう言っていただけて凄く嬉しいです。更新頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いします！ (2019年9月4日 18時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
グリみい - 感動して泣けました！！凄くこのシリーズが大好きです！！応援してます！ (2019年9月3日 22時) (レス) id: 460e4835e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆず | 作成日時：2019年8月18日 10時
