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笑顔の理由 ページ9

毎日のように勝負をしていると、あんなに反発していた筈なのに、気付けば4年が経っていた。




それまで俺は同年代どころか5歳上くらいまでなら楽勝で勝てていたのに、Aとは全くの互角。


勝って負けてを繰り返して、気付けば730勝730敗だ。


一体何歳の時から木刀を触っていたのかなんて分からないが、俺らと会う前も相当稽古していたんだろう。




女に負けて悔しくないと言えば嘘になるが、それよりも好奇心が勝っている。


俺がアイツに圧勝出来るようになった時、どんな顔をするんだろう。








「総悟ぉ! 私の団子食べたでしょ!」


「ああ。食った」


「正直! トシ、総悟がぁ〜」


「ドンマイ。近藤さんにまた買ってもらえ」


「その手があったか! 近藤さ〜ん!」




根っからの妹気質らしく、あの土方でさえAと一緒の時には優しい表情をする。


でも人懐っこいのかと思えばそうでもなく、初対面とはあまり話さない(特に歳下。慣れてなさそうな感じがする)。








いつも元気なクセに時々、Aがふっと泣きそうな顔をする時がある。


どこか遠くを見つめて、目を細めて。


何かを懐かしんでいる様な、もう諦めているような。




暫くすると顔を伏せて、静かに深く息を吐く。


髪にいつも付けている三日月型の髪留めに触れて、それでまた笑顔に戻る。


だけどその笑顔は、いつもより無理をしている様に見える。




何を懐かしんでいるのかも、何を諦めまいとしているのかも分からない。




だけど、Aが泣くのは嫌だ。笑っていてほしい。


でも、無理している笑顔はもっと嫌だ。




いつのの自然な、心からの笑顔が良い。


その理由が俺なら、もっと良い。

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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年6月18日 22時

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