名前 ページ26
「名前は一体何にするんですか」
そう総悟が口を開いたのは、何となく4人で町をフラリと歩いていて、川の土手に来た時の事だった。
「名前? 一体何の話だ」
「いや、もう浪士組なんて名乗るワケにはいかねェでしょ。俺達ゃもう浪人じゃねェ。本物の侍になんだから」
ああ、そういう事か。
「気の早ェ奴だ。一橋公護衛の任、しくじったら出世どころか全員ハラ切りだぞ」
「何言ってんですか。俺達ゃ土方さんの作った規律のおかげでマヨネーズかけ過ぎただけで切腹じゃねェですか」
頭の後ろで手を組んだ総悟が、煙草を吸うトシに珍しく正論をブチかます。
トシの作った局中法度、基本は良いのだけど時々物凄い私情が入っているのだ。
「トシはすぐそうやってさ〜、夢の無い事を!」
「るせェ」
「もっと夢を持って! 男は皆何歳になっても心は少年のままなんでしょ?」
「おいA、お前それ誰に聞いた。とんでもなく間違ってるぞ」
「え、そうなの?」
銀ちゃんに騙されてたのか。
「ともあれ、長かったな。裸一貫で武州から飛び出してきた俺達が、ようやくここまでこれた」
あの流れでこの真剣ムードに戻すのか。
近藤さん凄い。
川の向こう岸、ビルの建ち並ぶそこに、夕陽がだんだん沈んでいく。
あの日総悟と並んでみた夕陽と一緒で、綺麗で鮮やかな茜色だった。
「奇遇ですね」
そう、知らない声が私達にかけられた。
土手に笠を被ったおじさんが座りながら携帯を見ている。
「私も迷っていた所です。なんと名前をつけたらいいか。いえ、子供の話ですが」
「そうか、そいつはめでたいね。俺達も今生まれた赤ん坊みてェなもんだよ」
「……ええ。ですがこんな昏倒の時代に、一体どのように子を育てればいいのか、どのような父親になればいいのか。子の名前どころか、自分のゆくあても解りません。……アナタ達は、一体どんな侍になりたいですか」
近藤さんの、答えは_______。
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年6月18日 22時