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重なるその手 ページ4

総悟のお姉さん(ミツバというらしい)が持ってきてくれたご飯を食べて回復した私は、さてこれからどうしようかと頭を悩ませていた。


行くあても食べ物も無いんだ、計画もせずに出て行けばどっかで死ぬ。


こんなラッキーがまたあるとは、到底思えないし。




うんうん唸っていると、近藤さんが声をかけてきた。




「そういえばAちゃんは、何であんな所で倒れてたんだ?」


「食べ物と帰る所が無かったから」




そう正直に答えれば、近藤さんは少し驚いた様な顔をする。


まあ当然だ。ちゃんとした着物を着て、髪飾りまで付けてるのに、帰る所が無いだなんて。




「何でだ?」


「……私元々親が居なくて、拾ってくれた人のやってた私塾で暮らしてたの。でもその人がやってもいない事で捕まって、塾も壊された。だから」




お兄達の事は、言わなかった。


これ以上話して何かを思い出したら、また悲しくなると思ったから。




「そうか……大変だったな」




心の底からそう思ってくれている。そんな表情で、頭を撫でられる。




……ああ、ダメだ。4年前までは、たとえ独りでも耐えられたのに。


どうやら人は、1度温かさに触れるともう2度とそれを手放したくなくなるようだ。




頭を撫でてくれるその手が、お兄や、お姉ちゃんや、先生と重なって。


目から涙が溢れ出た。

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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年6月18日 22時

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