涙と組紐 ページ40
ポタ、ポタ、と溢れる雫が手紙に落ちて、墨の文字を滲ませる。
「うぅ……うぐっ……ひぐっ」
苦しそうにしゃくり上げながら、それでも決して声は上げない。
泣いて悲しむ事を四葉が望まない事くらい、簡単に分かるから。
出来る事なら涙も止めたいくらいなのに、そこまでの強がりはAにはまだ早かったらしい。
このままだと涙で滲んだ文字が読めなくなりそうな気がして、Aは手紙を封筒に戻そうとした。
その手が止まったのは、封筒の中に何かがあるのに気付いたから。
ぼやける視界で目を凝らして、それを手に取る。
四葉がいつも、手首に巻いていた組紐だった。
見慣れたそれは、四葉の瞳の瑠璃色をそのまま映したかの様な色合いで、ますます涙が溢れる。
四葉が何でこれをくれたのかは分からない。
だけど、
1回大きく深呼吸をして、パチンと頰を叩く。
涙で濡れた顔を着物の裾で乱暴に拭って、その組紐を手首に巻いた。
「またね、お姉ちゃん」
さっきは言えなかった、別れの言葉。
でもそれは、終わりの言葉じゃない。
また会おうっていう、約束の言葉。
江戸に行ったから何だ。
結婚したから何だ。
同じ空の下に居る、同じ侍の国に居る。
何も、永遠の別れなんかじゃない。
だったら、落ち込んでいる事に意味はあるの?
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ゆず(プロフ) - 緋澄さん» 1話目ができ次第、公開させていただくつもりです (2019年6月19日 17時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 時雨さん» 申し訳ありません、実は、続編は準備しただけでまだ1話も書いていないんです・・・! (2019年6月19日 17時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
緋澄 - 続編を読みたいのでパスワードを教えて下さい (2019年6月19日 14時) (レス) id: d02144b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 続編が、読みたいのでパスワードを教えてください。 (2019年6月18日 23時) (レス) id: bfac637d1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年4月5日 20時