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待ってろ ページ35

辿り着いた四葉の家は、どこか浮き足立った様子だった。


中から聞こえてきた、「四葉様、よくお似合いです!」という言葉に、まだ出発していないのかと少し安堵する。




さて、勢いで来たものの、これからどうするか。


このまま行かせちゃいけない事だけは分かるのに、じゃあ何をすれば良いのかが分からない。




Aが家の前でウロウロしていると、「おい」という声が聞こえてビクッとなる。


でもすぐに、その声の主が銀時だと分かった。


後ろを振り返ると、余程焦って来たのだろうか、銀時が、息を切らしながら立っていた。




「A、帰るぞ」




告げられた言葉に、思考が追いつかない。


やっと意味を理解した時、Aは銀時に掴みかかっていた。




「何言ってんの!? このまま行かせて、銀ちゃんはそれで良いの!?」


「…………」


「お姉ちゃん、泣いてた! 本当は行きたくないんだよ、江戸になんか! ずっとここに居たいんだよ!」


「…………」


「ねえ、銀ちゃん!」




いくら頭に血が上っていたって、自分が銀時に敵わない事くらい分かる。


それでも、このまま帰りたくなかったから、帰っちゃいけないと思ったから、Aはずっとそうしていた。


四葉を想っての涙が、銀時の着流しに染みを作る。




「……けねェだろ」


「何」


「良いわけねぇだろ」




やっと開いた口が紡いだのは、何かを堪えている様な、悲痛な言葉で。




「でも俺等に、何が出来んだ。アイツの相手は幕府の重役の息子だぞ。四葉が途中で姿を晦ましたりなんかすれば、家が危なくなる。んなもん、四葉が望むワケねェ」


「……じゃあ、言ってあげなよ!」


「あ?」


「お姉ちゃんは、銀ちゃんからの言葉を1番待ってるの。何か一言でも伝えてあげれば、お姉ちゃんは大丈夫だと思うから。……お姉ちゃん言ってたよ、銀ちゃんのお陰で強くなれたって」




銀時は少し目を見開いて、でもすぐに伏せる。


そうしている間にも、「じゃあ、そろそろ行きましょうか」なんて聞こえてきて、焦りが募る。




ついに、艶やかな着物を着た、いつもよりも更に綺麗な四葉が出てきた。


Aに気付いての驚いた様な表情は、隣の銀時に移った途端、泣き出しそうなものに変わる。




その時、銀時が一歩踏み出した。




「待ってろ」




それで、充分だったらしい。


真っ直ぐな目での言葉に、四葉は1回、確かに頷いた。

3つの手紙→←嫌な予感



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ゆず(プロフ) - 緋澄さん» 1話目ができ次第、公開させていただくつもりです (2019年6月19日 17時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 時雨さん» 申し訳ありません、実は、続編は準備しただけでまだ1話も書いていないんです・・・! (2019年6月19日 17時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
緋澄 - 続編を読みたいのでパスワードを教えて下さい (2019年6月19日 14時) (レス) id: d02144b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 続編が、読みたいのでパスワードを教えてください。 (2019年6月18日 23時) (レス) id: bfac637d1b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年4月5日 20時

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