エチュード(JUMP×JUMP短編集)

・ ページ10

マネージャーである俺たちは、タレントの家の合鍵を事務所に一応預かっている。


インターホンを鳴らしても応答がない。

カチャリ、合鍵をまわして、久しぶりに薮の家に入る。

ゆうとと付き合う前は、何度も来たことのある薮の家。入ってすぐの玄関の電気をつける。懐かしい薮の匂い。
靴箱の上には少し乱雑に鍵などが置いてある。


廊下を進むとキッチンとリビング。

…奥の寝室には、入ったことなかった。


「薮、入るよ？」


声をかけて、ドアを開けた。


薮は、ベッドで、すぅすぅと寝息をたてて寝ていた。汗がすごい。何度も寝返りを打ったのか、シーツに皺が寄っていた。

…とりあえず、倒れたわけじゃなさそうだ。
床に転がっているスマホを見て、落としただけだろうと推測して思わずホッと息をついた。





リビングに戻って、薬箱を確認する。冷えピタがあったので、薮の額の汗を冷たいタオルで拭いてから、貼った。

体温計で熱を測ると、37.9。



岩崎さんには一応メールで報告をした。
岩崎さんとゆうとは一泊して帰ってくる予定だ。俺はゆうとに心配をかけたくないからと薮の家にいることは黙っててもらうことにした。



薬は飲んだのかな。キッチンを改めて見ると、
シンクの上に薬を飲んだ形跡。でも、何も食べてはないみたい…

起きた時のために何か、お粥でも作ろうか…

キッチンを見回して、あまりにも調理器具がないことに笑ってしまう。

それと同時に、山田はこの家を訪れないんだろうか、と疑問に思う。


よく見ると、頻繁に恋人が訪れているような痕跡はない。


たとえば、

お揃いのマグカップとか、

色違いの歯ブラシとか、

見たくなかったものを探しては、安心する自分。


なんとか冷蔵庫に入っていた卵とチューブの生姜、以前俺が指導して小分けにさせた冷凍ご飯、刻んでだいぶ日が経っているのか、タッパの中で霜のついたネギを冷凍庫から見つけた。

・→←今だけ(yb×hk)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す