エチュード(JUMP×JUMP短編集)

歯磨きしゅこしゅこ(yb×hk) ページ16

これも馬鹿っぽいです…。


yb side

「俺、虫歯だった…！」

歯医者に行っていた光が悔しそうな顔で帰ってきた。乱暴にスニーカーを脱ぎ、ズカズカと音でもしそうな勢いでリビングに入りソファにダイブする。スプリングが軋んで光の髪がふわふわ揺れた。


俺は玄関でおかえり、と出迎えたのだけど、光があまりにも悔しそうな顔をして横をすり抜けたので慌てて後を追うしかなかった。


「なんでそんな顔してるんだよ、もう治療してもらったんだろ？」

光の隣に座り、髪の毛をさらさらと撫でながら、柔らかい声を出す。


「だって…！俺、薮よりちゃんと歯磨きしてるのに！なんで俺ばっかり虫歯になるんだよ！」



…虫歯は、なりやすい人となりにくい人がいる。たとえどんなに丁寧に磨いたって、できやすい人はできてしまうし、全然歯を磨かない人でも虫歯にならないヤツはならない。


昔何かのついでに雑学として披露したのだけれど、光はすっかりそれを忘れているようだった。


「なぁ、どうやって歯磨きしてんの？」

今にも俺を押し倒すくらいの勢いで、必死で聞いてくる光。


「えぇ⁈どうやってって…」


そんなこと言われてもなぁ…


あ。


「ひかる、じゃあ俺の磨きかたをレクチャーしてやるよ」


「ほんと？ありがと、やぶっ」

ソファから飛び降りた光は、子供みたいにニカっと笑った。








「待って、やぶ…これ、恥ずかしいかも…」

「んー？別にそんなことないだろ。さっきも歯医者で同じことしてもらったんだろ？」

「歯医者さんと薮は違うもん…」

口を尖らせて文句を言うけど、

「まあまあ、昔はお前も親にしてもらってただろ？

仕上げ磨き」


正座をした俺の膝の上に、光に寝っ転がってもらった。
小さい子に母親がするように、口をあーんと開けさせる。


右上の奥歯に歯ブラシをあてて、しゅこしゅこと磨き始める。細かくブラシを動かして、少しずつ角度を変えて移動させる。

「やう、りょーりゅりゃん」

…薮、上手じゃん、かな。

大きく口を開けたまま、目を瞑っている光。



…なんか、変な気になってきた。

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