異食癖【スカラビア寮】

◇ ページ42

一年生だからまだ魔法の扱う難易度が優しい方らしい。



今日の課題は魔法であらゆる物体(小さなものでいいらしい)を浮かせられるのこと。


応用編は物体を浮かせたまま移動させること。









でも、正直魔法、私、使えないよ？！


やったことないし！

あれってどう使っているの？

イメージして念力で

『動け〜〜〜』

って唸るのかな、呪い師みたいに。






目の前に木製の椅子がちょこん、と置いてある。



皆はもう作業に取り込み中だけど


私はマジカルペンを手にしたまま椅子の前で突っ立っていた。




『······あのぅ、どうやるんですか、これ··』






先生は他の生徒の指導中で、私も私で聞きにいく勇気がない。






どうすれば···！

焦って私はマジカルペンを椅子に何度も指す。



『浮け！』







ｼｰﾝ────




『浮けっ！』





気合い入れて声を大きくしてみるけど、
何も反応がない。





?「みろー！俺もう浮かせたぞーっ！
　 ほらAも見ろよっ」



隣でクラスメイトが私を見てどや顔しながら自慢してくるが、別にムカつくとかは思っていなかった。



だって、私、浮かせること、できないし。

扱い方が分からない訳だし。




実力がないからただすごいって心の底から思った。




『すげー！僕まだできていないからもっと頑張る！』


向こうは私が喧嘩を買うって思ったらしく、ただ単に褒められたことに口をポカンと開けていた。





?「お、おぉ、頑張れ」



期待はずれでごめんね、何か。


「A！お前はまだその椅子を浮かせていないのかっ」


セベクが椅子を三個浮かせながらこっちに歩いてくる。



三個？！





やっぱりディアソムニア寮生ってこういうの

おちゃのこさいさいなんだ。




『だ、大丈夫だから！浮くって！浮かせてやるから！なっ、椅子、僕と一緒に頑張ろう？？』






焦って本来は命を宿さない椅子にまで話しかけて講和しようといている私はどうにかしていた。





椅子「·····(何だコイツ)」









『浮いてー！』


必死にマジカルペンを椅子に指すけどなにも起こらない。


どうしよう、皆もう浮かせているのに、私だけ浮かなかったら本当に皆から浮かれる存在になるだろう。







必死になってゼェハア荒い呼吸をしていると、
後ろから凄い風圧が来た。

?「ギャアアアアアそこを退くんだゾー！ぶつかるんだゾ！」




声が終わる前に私の背中に何かが激突した。

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