まだ愛を知らない【リヴァイ】 (ページ1)

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時刻は既に日付を変えていた。

古時計の秒針が刻む音がやけに大きく聞こえる中、
彼女は屋敷の窓の向こうに広がる巨大な湖に映る月を窓の中からひっそりと眺めていた。

巨大でありその深さは知れない湖。
1点の汚れもない蒼の美しき湖。
大きさだけ立派の孤独な湖。

彼女はこの湖があまり好きではなかった。
得体の知れない深さにいつか飲み込まれてしまう程恐れを感じた経験があるからである。
それなのになぜかいつも覗いてしまう自分のことが好きになれなかった。

ゆっくりと瞬きを繰り返すうちに今まで彼女の頬を照らさしていた月光が雲の中へ姿を消した。

突如、後方から細い閃光が彼女の首にかかる。

柔らかな肌に鋭利な刃が食い込みその陶器の冷たさに一瞬肩をすくめると反射で開いた手をゆっくりと握り返した。

彼女は自分が刃物を突きつけられていることを悟ったが、慌てることなどしなかった。
むしろ心は落ち着いが増すばかりだった。

刃物を突きつけてきた相手が何かを言う前に彼女はゆっくりと相手の方に振り返って、微笑んだ。

「よく眠れましたか？」

包帯で全身を巻かれ刃物を突きつけてきた男に向かって彼女は静かな声でそう言った。

男は顔を歪ませながら苦しそうな表情をすると掠れ苛ついた声で乱暴に、でも小さな声で後ろに倒れながら言い放った。

「...絶対に、殺してやる」

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