【文スト】噂の最強異能力者は華麗にヨコハマを闊歩する

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あぁ、これは正しく、体が求めているのだ


彼女の眼差し、声音、手に触れるこの温かさ全てを、この体が所望しているのだ


これは独占欲だ、どうしようもない恋情だ
けれど、それを告げたところで彼女はまた慈愛に満ちた声と眼差しで、自分を諭すのだろう


だから独占欲は封じた。故に所有欲も湧き上がらない。
ただあるのは、燃え上がりねじ曲がりそうなこの恋情のみ。


それを数年間拗らせた太宰の心境は、言葉では表せることが出来ぬ程のものとなっている


これを解消するにはどうしたら良いか？

彼女を手に入れたところで太宰が満足するのか？


それは太宰にも分からない。知りたければ、まず彼女に受け入れて貰わないと


だから太宰は彼女には誠実に振る舞う

恥を晒したところで彼女はなんとも思わないだろうし、彼女に似合うのは精錬された雰囲気のみだ



『そろそろ終わらせてやりなさい。これからヨコハマの未来を背負う若き子を、骸にすることはいけないよ』


「えぇ、獣に食い殺される最後も、中々悪くないと少し思いましたが、彼では私を殺せませんし………


何より、貴女がそうご所望なのですから、そうするのが1番です」



太宰はついに逃げ回るのをやめて、飛び上がって噛み付こうとする白虎を見上げる


そして左手に異能力を発動させた



「異能力_________『人間失格』」



広い光が湧き上がる

太宰は、飛び上がる獣に左手を翳し、そして指1本を残して、獣に触れた


途端に、虎の動きが停止する



「私の能力は、あらゆる他の異能力を触れただけで無効化する」



そして獣は、再び元の少年の姿に戻る

人し指の先で気を失う少年を、太宰は両手で抱きとめた


普段の彼であれば、男と抱き合う趣味はないと言って、そのまま地面に落下させるようなところを、敬愛し、思慕を向け、依存にも似た恋情を抱く彼女を前にして、易々とそれを投げ捨てて見せた


彼女が『ヨコハマの未来を背負う若き子』と言ったのだから、その未来ある若者を、彼女の前で貶める訳にはいかない


太宰の腕の中で落ち着いた寝息を立てる少年に、最早異能の虎の影はなく、虎探しは無事に収束した



『Das ist toll！素晴らしい最後だったよ、太宰君』


「伯爵(アール)が芽吹かせた未来ある若者達の、素晴らしき一歩にて。私は感動致しました」



そう言って拍手を贈る、高貴なる騎士と忠実なる執事


今も昔も追いかける人からの賞賛は、あの太宰をも満面の笑みにさせるのだった



「ヨコハマの未来を背負う若き子ですから」

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