【文スト】噂の最強異能力者は華麗にヨコハマを闊歩する

伯爵は港街で薔薇を愛でる ページ3

欧州『時計塔の従騎士』を辞し、遠く離れたニッポンのヨコハマにて、豪勢な一軒家を購入し、広い庭を薔薇園に変え、家の外装や内装に手を加えまくり、メルヘンチックな洋風建築へと改造し終えた数ヶ月後。
1月にヨコハマに来たが、現在は4月となっていた



欧州にて『伯爵』の爵位を持つ、生まれも育ちも貴族でありながら、博愛なる騎士道精神を重んじるこの女は、アンティーク風に纏められたティーセットを目の前に、大好きな薔薇と好物であるローズヒップティーとベリースコーンを口にしながら、優雅な自由時間を過ごしていた


本日の出で立ちは、白のスラックスに薄紫のハイネックニットを緩くズボンに入れ、白のジャケットを肩にかけている



『…………思ったより過ごしやすい街じゃないか。
海から吹く風のなんと心地よいことか。食べ物も欧州と同じくらい美味しく、ご近所の皆も良い人ばかり……隠居には最高の場所だとは思わないか？』



ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ


異能力−−−−−−−『若きウェルテルの悩み』



片手にはドイツ語で書かれた、近年の自然科学に関する論文を手にし、大きく爽やかな空気を吸い込んで、清々しい笑顔で上記を述べると、傍に控える者にそう問いかける



「本当ですね、伯爵(アール)。まさか、欧州の他にも、このように過ごしやすい場所があろうとは」



そう言って、彼女のカップにお代わりの紅茶を注ぐのは、彼女が時計塔時代に見出し、そのまま退団と共に連れてきた執事である


黒の執事服は上等な生地で作られ、所々好きな色である緑が使われた、執事の正装を身に纏うこの男は、主たる伯爵の隣に侍るのに相応しい美貌を持ち、その美しい黒髪と翡翠色の目は、吸い込まれそうな程に奥深く輝きを放っている




トマス・マロリー


異能力−−−−−−−『アーサー王の死』



「思いの外なんでも手に入れられて、私としては大変満足しております。」


『それは良かった。ここが私達が骨を納める所となるだろう。嫌悪を覚える土地であっては意味が無いからね。まだここでの生活は始まったばかりだ。これから、もっと楽しいことをしていこうではないか』


「はい。伯爵(アール)。何処までもお供致します」


『うむ』



ここはヨコハマの海沿いの一等地


ポートマフィアや異能特務課の膝元でありながら、彼女達の居場所が誰にもバレないのにはわけがある



『私の優秀な執事(ベディヴィエール)。これからもよろしく頼むよ』


「はい。伯爵(アール)」

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