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「君が噂の香月くんか」


俺がしげしげと桐生先輩を見つめていると、先輩の真向かいに座っていた二年生が声をかけてきた。

黒髪短髪のすっとした見た目で清潔感がある。


「噂?かどうかはしりませんが、香月です」

「ああ自覚ないのか?外部からイケメンがきたって学園中騒いでるのに」

「えっ」


そんな話は初めて聞いた。
驚いて思わず桐生先輩の方を見やると、彼は実に愉快そうに笑っていた。もしかして先輩は最初から俺が話題になっている人物だと気づいていたのだろうか。

初対面の人から一方的に認識されているなんともいえない気まずさや、その事実に今まで気づけていなかった自分の鈍感さにうんざりしていると桐生先輩が口を開いた。


「もしかして本当に今の今まで無自覚だったの?」


追い打ちをかけないでください。


「……悪いですか?」

「いや、悪いなんて言ってないじゃん。鈍感で可愛いよ」

「はあ?」


可愛い、なんて脈絡のない言葉がいきなり出てきて思わず敵意を剥き出しにした聞き返しをしてしまう。

いや、俺が鈍感なのは認める。認めるが、可愛いはないだろう。
そもそも男に対して使うような表現ではないし、使ったとしてもせいぜいあっくんのように愛嬌がある人物にしぼるべきだ。


「はは、ごめんて。怒った?」

「いやだって俺可愛くないですもん。馬鹿にしてます?」

「そんなことないよ。俺は本当に那音が可愛いと思ったから言ったの」


むくれながら文句を言った俺に、先輩が急に真摯な目線を向けてくるものだから思わずどきり、とした。

イケメンにそんな顔であんなこと言われたら嘘でも冗談でも信じてしまいそうになる。怖い。俺ってひょっとして可愛いのか?

羞恥から思わず口元を覆うと、そんな仕草に対しても先輩は「可愛い」と言った。もうやめてくれ。


「耳まで赤くなってる。本当に可愛いね、那音」

「おい、目の前でいちゃつくなって。飯が不味くなる」


桐生先輩のご友人からの苦情にふと我に返る。そうだよここ食堂じゃん。めっちゃ人いるじゃん。

慌てて周囲を見渡すと、どうやら俺の予想通り俺達はなかなかに周りの関心を集めていたようで、俺と目が合った途端思い出したように食事に戻る者が多数いた。
さっきまで熱を帯びていた顔面が、すっと青ざめていくのがじぶんでもわかる。

ああ、さらば俺の平穏な高校生活。


「最悪……」


未だ俺に可愛い可愛いと愛の言葉を告げてくる先輩を睨みながらため息をついた。

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なつき - 作者さん、どしたん? (2019年8月1日 21時) (レス) id: e36f276856 (このIDを非表示/違反報告)
ペコ - めっちゃハマりました!最新頑張って下さい! (2019年7月18日 0時) (レス) id: d6a2adbe5a (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 更新してええええ泣 (2019年7月17日 16時) (レス) id: fdd612b178 (このIDを非表示/違反報告)
あんあんあんこ - けしからん!もっとやれ!(サーセン) (2019年7月14日 22時) (レス) id: 57bf108e06 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 仙椿(せんつばき)さん» コメントありがとうございます!尊いだなんてそんな照れちゃいます( ¯///¯ ) 頑張ります、今後ともよろしくお願いします〜! (2019年6月30日 0時) (レス) id: 4a341f9b26 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2019年6月8日 22時

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