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「その先輩と仲良くなったの?」
「んー、まあ程々に。桐生って人なんだけど、2-Aだって言ってた」
「へえ、桐生先輩ね――って、桐生?」
少し間を開けて聞き返してきたあっくんに、そうだよと頷く。
やけに驚いた顔をしているが、何故だろう。
「なに、あっくん桐生先輩のこと知ってるの?」
「知ってるも何も、超有名人だよ!内部生なら誰でも知ってるって言っても過言じゃないと思う」
「え、そんなに?」
「そんなに!親衛隊もいるし、過激なファンも多いよ。桐生先輩には」
親衛隊。
それは生徒会役員などの一部の生徒につくファンクラブのようなもので、親衛隊を持つ生徒には極力近づかない方がいいというのが入学初日にあっくんが施してくれたこの学園における処世術の一つだった。
何故近づかない方がいいかって、それは単純に危ないからである。
例えば生徒会副会長のところのように副会長を遠くから眺められればそれでいいという穏健派の親衛隊があれば、会計のところのように会計に近づく他者には容赦なく制裁を加えるという過激派の親衛隊もある。
あっくんの口振りからすると、桐生先輩のところは後者のようだ。
「あー、そうだったんだ……じゃああんま関わらない方がいいかな」
先輩は困ったことがあればいつでも来ていい、と言っていたが自らの安全の為にもそれは控えておくべきだろう。
「あ、いやでも桐生先輩自体はいい人だから、なおくんに桐生先輩と仲良くしたいっていう強い意志があるなら俺は全然いいと思うよ。それに、その方が俺も妄想が捗るし」
「――え?」
「ああいや!なんでもない!」
あっくんは誤魔化していたが、今確実に「妄想が捗る」っていってたよなこいつ?
あっくんには男同士の恋愛、いわゆるBLを好むきらいがある。寮で初めてあった時にすぐさまカミングアウトされたので俺はそれを知っている。
そもそも姉がレズビアンなので同性愛に偏見はなかった俺は、そのあっくんの趣味を驚きはしたものの忌み嫌うことはしなかったため彼から甚く好かれ、あっという間にあだ名で呼び合う仲になったのだが、まさか自分が妄想される側にまわるとは思いもしなかった。なんとも複雑である。
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なつき - 作者さん、どしたん? (2019年8月1日 21時) (レス) id: e36f276856 (このIDを非表示/違反報告)
ペコ - めっちゃハマりました!最新頑張って下さい! (2019年7月18日 0時) (レス) id: d6a2adbe5a (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 更新してええええ泣 (2019年7月17日 16時) (レス) id: fdd612b178 (このIDを非表示/違反報告)
あんあんあんこ - けしからん!もっとやれ!(サーセン) (2019年7月14日 22時) (レス) id: 57bf108e06 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 仙椿(せんつばき)さん» コメントありがとうございます!尊いだなんてそんな照れちゃいます( ¯///¯ ) 頑張ります、今後ともよろしくお願いします〜! (2019年6月30日 0時) (レス) id: 4a341f9b26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2019年6月8日 22時