【歌い手】ようこそ、夜想曲サーカスへ。【CIRCUS】 (ページ14)

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りょーくんが懐中時計で時間を確認すると、もう８：２７だった。
今すぐに自分の持ち場に着けば、丁度いいくらい。

だったから、この中で一番経歴の長い灯油さんに指示してもらって
全員、一斉に自分の持ち場に移動した。

全部の範囲を５等分にして、私はステージ入口の反対側。
確か右隣は松下ちゃんで、左隣はびすだったと思う。
でも隣と言ったって、結構広い土地だから相手の歌声は聞こえない。
もちろん、自分が歌うのに集中しているっていうのもあるけど。

きっと、銃でもぶっ放さない限りは、他の音なんて聞こえないだろう。

『一応銃は持ってるけど、きっと使わないよね』

びすがあそこまで言うなら……と思って持ってきたはいいけど、やっぱり必要ない気がする。
そう思いながら、足のところに忍ばせておく。
さて、もうそろそろ始めようかな。

招待状を出す、という作業は至って簡単。
本当にただ歌うだけなのだ。

何故なら、毎回観客として招待する人は元から決まっていて
情報を調べてくれた人、まふ君やスズム君、歌詞さんが伏線を張っておいてくれているから
私達が歌っているだけで、招待客が自ら寄ってくるのだ。
その伏線っていうのが何なのかは分からないけど。

それにプラスして、このサーカスに入っている人は皆不思議な力を持っている。
私達が歌うと、人を惹きつけるらしい。

だから、私達は歌っているだけ。

上手に歌えなかったり、声が綺麗でなければ意味はないけれど。

もうそろそろ。

頭の中で人柱アリスの曲を流して、前奏を聴く。

よし、今だ。

『一番目アリスは勇ましく―――――――――……』

こうして歌っていると、人がわらわらと集まってくる。

２番を歌い終わる頃には、もう何十人もの人が集まっていた。

この街はそんなに極悪人が多いのだろうか……。

少しだけ、不安になってきた。