満たされ溢れ尚注がれる愛情は、 ページ2
『───時に首を真綿で絞める。』
彼女の目は彼を映していた。少しして、ぱちり、と、彼女が瞬きをする。
「………貴方のその蜘蛛の糸のように細い弱さが、私はとても愛しい」
「……A」
「嬉しい、ですよ。私は死なないと分かっていて、それでも私の死を恐れてくれるのは」
ジンの銃弾は確かに彼女の心臓を貫いていた。しかし、彼女は流暢に、言葉を口にしている。それは、とある組織の研究成果だった。それ故に、彼女は傷つくことを恐れなくなった。
それ故に、それは性感となり。それ故に、それは手段へと相成った。
「うふふ。貴方はこの事実をどう報告しますか?ジンさん。心臓を撃ったが死ななかった、奴は不死身だ、と報告し、ベルモットやキャンティと手を組んで、私を殺そうと試みますか?」
「…徒労だ。それを行う人間が誰であれ、その手段が何であれ、…お前は死なん」
よくよく考えれば、お前は俺達を愛しているから、裏切ったとしても情報は漏らさん。
「そんなにジンさんが取り乱してくれるとは思いませんでした」
「うるさい」
「避けられるのにそうしなかったから、私は死ぬ気なんだって、思ったんですか?」
彼女を貫いた銃弾を彼女自身が拾い上げ、立ち上がったかと思えば血に塗れたそれをさあ受け取れ、とジンに差し出す。しかし彼は手荒くそれを叩き払い、銃を懐に仕舞うと煙草を取り出して口に咥えた。
Aは彼のポケットに手を潜り込ませ、そこからライターを取り出して火をつける。どうぞ、と火を差し出した彼女をぎろりとジンは睨み付けたけれど、舌打ちをして、彼女の仕草に甘んじた。
「…お前は、人の首を絞めるスペシャリストだよ」
「そんなこと。人を絞殺したことはありませんよ?」
「ベルモットやキャンティに聞いてみろ。きっと同じ答えを出す」
「裏切り者に接触の機会を与えると?」
「ふん…それくらいの機会は自分で作り出せ。ゾンビに構っていられるほど暇じゃない」
「うふふ…はあい。そうすることにしましょうか」
彼女は可笑しげに笑いながらライターの火を消したり点けたりと手遊びを繰り返す。
その様子をぼんやりと眺めていたジンは、「A」と、再び彼女の名前を口にした。
「もうひとつ教えてあげましょうか、ジンさん」
「…あ?」
「貴方が私の名前を呼ぶときは、私に縋りたいと訴えるとき。」
「、………」
ライターの火を消した彼女はそれをぽいと足元に捨てると、がばと彼を抱き寄せた。
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作者名:サーカス | 作成日時:2017年6月22日 18時