三十五、 ページ35
Hokuto side
懇願するジェシーの前で、俺の中では怒りがフツフツと沸いていた。
勿論その人間自体は可哀想だと思う。
だからってその僅かな同情心が、散々育て上げてきた憎さに敵うかと言われればそんなことは無かった。
北斗「…どの口が言ってるか分かってんの？
今までお前らの方が対立を深めるようなことをしてきたくせに、弱みがバレたと思ったら力を貸せとか、自分勝手も大概にしろよ」
俺がそう言い放つと、ジェシーは顔を歪めて口をつぐんだ。
そしてさっきから人間につきっきりの樹の方を見る。
樹は何かに迷うように眉間に皺を寄せていて、その目線はいくらか空中を彷徨った後に俺を向いた。
樹「…北斗」
北斗「何」
樹「もしお前が力を貸してくれるなら、お前のとこの人間は諦める」
北斗「！！」
一瞬自分の耳を疑った。
あの樹が、下手に出て譲歩するなんて。
ジェシー「え、樹、良いのそれ！？」
樹「良いわけあるか。ただこんだけ対立してきた相手に無条件で助けろは流石に無理があるだろ。
�眞呂浪兇蕕砲箸辰討修譴世餌膸�な存在だ。だから…頼む」
言い終えると、悔しそうに唇を噛んで俺に頭を下げた。
慎太郎「北斗、、」
慎太郎が心配そうに俺の顔を伺う。
突然降って湧いたこれ以上ない好条件。
考えろ。俺らにとって何が一番正しい選択か。
俺は樹の頭を掴んでグイッと前を向かせた。
一瞬合った目はすぐ逸らされる。
北斗「お前が俺に頭下げるとか気持ちわりい」
樹「…そうかよ」
北斗「…話は分かった。協力してやる」
半ば諦めたように目を伏せていた樹は、俺の言葉にこれでもかというほど目を見開いた。
北斗「それでお前らに干渉されなくなるなら願ったり叶ったりだ。
ただその人間はここに置いていけ。何の知識もないお前らじゃ悪化させるだけだ」
樹「…そうか」
北斗「礼の一つも無しかよ」
樹「�眞呂良造�治るまでは言わねえ」
樹たちの言葉を全て鵜呑みにしたわけじゃない。
でも俺は、ふたりの真剣な眼を信じることにした。
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作成日時：2020年7月30日 22時
