真珠を溶かして (ページ27)

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二十七、ページ27

Juri side

(回想)

髙地優吾。
５年前、『門』を通ってこの世界へ来てしまった人間。

俺とジェシーが明け方の路上で偶然見つけたそいつは、気を失った状態で倒れていた。

外見は酷い有様で。

可愛い顔をしていながらその頬は酷くこけていて、身体は痩せ細り全身痣だらけだった。

これを見捨てろって方が無理な話だ。

俺らは急いで屋敷に連れて帰り、怪我の手当てをした。

怯えられることを覚悟していたが、目を覚ました髙地の反応は淡白なものだった。

俺らがこの世界について説明している時も、素っ気ない返事を繰り返すばかり。

その話しぶりは、まるで中身のない人形を相手にしているようで、気味悪くさえ感じた。

それを見かねてかジェシーがこんなことを尋ねた。

ジェシー『…こーち、俺らが怖くないの？俺ら鬼だよ？喰べられちゃうかもとか考えないの？』

髙地『…怖いなんて思わないよ。人間の世界で俺を虐げていた村の人達の方がよっぽど怖い』

光の無い目でそう呟いた髙地を、俺はとても見ていられなかった。

その髙地が、もとの世界に帰りたいかと聞かれた時だけは、声を震わせて取り乱した。

髙地『嫌だ、帰りたくない、、帰るくらいなら樹とジェシーに喰べられて死にたい、、』

顔を青くしてガタガタと震え出した髙地を、俺らは必死に落ち着かせた。

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ジェシー『こーちは一生俺たちが守る』

最初に口に出したのはジェシーだった。
もちろん俺も気持ちは同じ。

髙地『…え』

ジェシー『こーちは不幸だけ抱えて野垂れ死んで良い人間じゃないよ。幸せになってくれなきゃ俺の気がおさまんない！』

樹『同感。とりあえず、向こうで出来なかった普通の生活をここでしてみりゃあ、気持ちは多少前に向くだろ』

髙地『…何で、、何でそこまでしようとしてくれるの、？俺なんて迷惑なだけじゃ、』

樹『今にも死にそうなヤツを放っておくほど、俺らは非情じゃないんでね。お前には意地でもここで暮らしてもらうから』

すると、髙地の顔から作り物のような表情が剥がれ、無垢な子供のような顔になった。

黒目がちな眼は水分を増していき、決壊して雫が頬を伝った。

顔を手で覆って泣きはじめた髙地。
俺とジェシーはその背中をそっとさすって泣き止むのを待った。

髙地『樹、ジェシー、ありがと、、俺、ここでなら幸せになれそう』

そう言って顔をあげた髙地は、眩しいほど純粋な笑顔をしていた。

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