真珠を溶かして (ページ20)

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二十、ページ20

Shintaro side

慎太郎『わ、かった、、やってみる』

途切れ途切れの返事はあまりに情けなくて、それでもジェシーは、

ジェシー『ありがとう…！ごめんな、慎太郎まで巻き込んで…』

そう言って俺に抱きついた。

ジェシーやその鬼がどんな事情を抱えてるかなんて知らないけど、誰にだって言いたくないことの一つや二つある。

それが病気に関わるものなら尚更だ。

結局、当の鬼についてはほとんど何も知らないまま、俺はジェシーの頼みを引き受けた。

次の日。

北斗『ちょっと出てくる。夕方までには帰ると思う』

慎太郎『…うん、いってらっしゃい』

北斗が外出したのを見計らって、保管庫に向かう。

俺がこの家に初めて来た時一度だけ入ったことのある、特別な薬の保存室。

北斗の部屋から勝手に持ち出した鍵を差し込み、心の中で謝りながらその重い扉を開けた。

張りつめた空気の部屋、その壁一面の棚に整然と並ぶ薬瓶。

一つ一つ手に取って慎重に見ていく。

これだと当てはまるものはなかったけど、効果のありそうな丸薬はいくつか見つかったから、それらを瓶から取り出してすぐ部屋を出た。

鍵をかけると同時に、心臓がバクバクと激しく音を立てる。

"ジェシーとその同僚のため"

そう言い聞かせても罪悪感は拭えなかった。

帰ってきた北斗に対して普段通り振る舞おうにも表情筋はなかなか言うことを聞いてくれなくて、

北斗『慎太郎、何でそんな真顔なの？』

こんなことを言われる始末。

それでも何とか誤魔化して、次の休日、ジェシーに薬を渡した。

慎太郎『探してもドンピシャってのは無かったんだけど、これなら近いと思う』

ジェシー『本っ当、ありがとう！一つ借りができたな』

慎太郎『良いってそんな。親友なんだし』

ジェシー『…慎太郎さあ、俺が言うのも何だけどほんっと良いヤツ過ぎて逆に心配になるよ。マジありがと』

ジェシーの言葉のお陰で、少しは罪悪感も薄れたような気がした。

だけど。

北斗『慎太郎』

屋敷に帰り、玄関の扉を開け、目の前で空気をピリつかせて俺を睨みつける北斗を見て、

一瞬で俺の顔から血の気が引いた。

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