一、 ページ1
Taiga side
一体何が起こったのか。
突然目の前が暗くなって、次に気が付いたとき、俺は見知らぬ町の路上に座り込んでいた。
まるで、たった今この世界に産み落とされたように。
夜が明けてまもない時間のようで、辺りには人の姿は見当たらなかった。
これ、、どうしたらいいんだろう。
当たり前だけどこんな経験したこと無いし、でもここで黙って座っていてもきっとどうにもならない。
とりあえず、適当な家を訪ねてみよう。
そう決めて立ち上がろうとしたとき、ふと前方に気配を感じて顔を上げた。
そして俺は、凍り付いたように動けなくなってしまった。
北斗「何で人間が…『門』は昨日閉じたはずなのに…」
俺の目の前にたたずむソレの姿。
眼球の白黒が反転したような目、髪の生え際から伸びている大きな角。
ソレはまるで、御伽噺に出てくる鬼そのものだった。
北斗「…しょうがない」
異形の彼は少し顔をしかめた後、急に俺の身体に手を伸ばし、そのまま持ち上げた。
腰が抜けていて、まともな抵抗すらできない。
北斗「抵抗しない…？いや、怯えているだけか。少し辛抱してくれ、お前には訊かなきゃならないことがありそうだ」
彼はそう言いながら俺を背負い、どこかへ向かって急ぎ足で歩き出した。
・・・
彼に背負われてやってきたのは、辺りの民家より一回り大きな屋敷。
奥のほうの部屋まできたところで、ようやく背中から降ろされた。
これから何をされるのだろう。
もしかして、喰われてしまうとか。
一度考え始めてしまうと止まらず、恐怖で血の気が引いていくのが自分でもわかった。
北斗「なっ、顔がどんどん青白く…！落ち着け、俺はお前をどうかしようという気はないんだ」
彼はなぜか少し慌てて、なだめるようにそう言った。
まだ口に力の入らない俺は、情けなくコクコクと頷くばかり。
北斗「お前…言葉は話せるか？」
大我「……はい」
北斗「なら単刀直入に訊く。お前はなぜあの場所にいた？」
大我「わ、分からないんです。気が付いたらあそこにいて…あそこがどこかも分からなくて…」
北斗「…やっぱり『門』を通ってきたとしか…でもなぜ…」
彼は考え込むように黙ってしまった。
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作成日時：2020年7月30日 22時
